Devil†Story
ーー数時間後。
麗弥の手術は無事に終わった。
やはり左足は膝から下が驚くほどポッキリと綺麗に折れ、その上少し肉を食いちぎられた様な跡もあった。
左肩は食いちぎられてはいないが、何か大型生物に噛まれたような後があった。
麗弥は醜鬼。
少し時間はかかるが、常人なら最早歩くことは不可能なこの傷でも綺麗に治るだろう。
手術が終わり、麗弥を治療用の部屋に移すとクロムとロスが入ってきた。
「終わったか」
クロムの言葉に頷く。
「酷い怪我だった。筋肉組織はメチャクチャで…骨は綺麗に真っ二つ。でも…」
「醜鬼になった、麗弥なら大丈夫っしょ。ノーマルならもう無理だけど。醜鬼にこんな利点があったとはね」
ロスは呑気にそう呟いた。
「…それで、犯人は…」
クロムとロスはチラリと石川さんを見た。
…石川さんの前では言いづらいことなのか…。
しかし、こう何度も大怪我をするこの子達のことを…黙っていることはもう出来ない。
俺は黙って頷くとクロムとロスは口を開いた。
「俺達がこのバカを見付けたときには既にこの怪我を負ってた。…間違いなく人間の仕業じゃない」
「多分、狼族と…それだけ綺麗に足を…それも何も抵抗をしていないとこを見ると人形使いもいるだろうな」
クロムとロスの口から出た非現実的な言葉に石川さんは信じられないといった顔をした。
そんな石川さんに俺は「そこら辺のことは追々話すから」と伝えると、石川さんは「わかりました」と黙って話を聞いてくれた。
「殺さずにカフェの前にこいつを置いてきたのは…理由があるはずだ。…多分、いつでもこう出来るぞという脅しだな」
「っ…」
脅しにしては酷すぎる。
稀琉の兄はそれほどまで…稀琉を苦しめたいのか…。
その時、部屋に設置されている黒いベルが鳴った。
これは、black roomへの要請であろう。
だが、今は席をはずす訳にはいかない。
俺は石川さんに頼んだ。
「石川さん。俺の代わりに…依頼人と話をして来てくれないかな。金額とかは覚えているよね?オーナー代理として頼めないかな」
「えぇ、それは構いませんが…俺に貴方の代わりが勤まるでしょうか…」
石川さんは、少し不安げだったが「大丈夫だよ。代理としてと伝えれば」と言うと「分かりました」と言って頭を下げてから部屋から出ていった。
「なんだよ。あの従業員気にいってんのか?」
クロムがぶっきらぼうに聞く。
「うん。あぁ、見えて俺より年が若いけど…落ち着いてるし」
「えっ、彼はそんな若いの?」
ロスが驚いたように聞く。
確かに石川さんは落ち着いた雰囲気である。
ロスが驚くのも無理はない。
「そうだよ。彼は20歳」
「もっとフケてるのかと思ってた~。刹那がさん付けで呼ぶから」
「あぁ…なんとなくそう呼んでいただけ」
そんな他愛のない話をしていると、クロムが痺れを切らしたように話を元に戻した。
「アイツの年なんかどうでも良い。とにかく根城はバレたと言うことだ」
「じゃあ、なんで奇襲をかけないんだ?」
俺が不思議に思ってるとクロムは面倒臭そうに答えてくれた。
「入らないんじゃなくて、入れないんだろ」
「えっ?」
どういうことだ?
入れないって…
更に頭の上に?を出しているとまたクロムが面倒くさそうに説明した。
「…不思議だと思ったことないか?俺らが人間でない奴に狙われたとき…奴等は俺らがここから出たときにしか襲ってこなかったのは」
「!」
そういえば、そうだ…。
麗弥や稀琉の姿を知っていたということは…この場所だってバレていいはずなのに…。
「それはな。こいつが、ここにでっけえ結界張ってるからだよ」
そう言うとクロムは、親指でロスを指した。
「ロス…が?」
ロスを見るとニコリと笑って羽を出した。
犬歯が鋭くなる。
更に普段は絶対に出さない尻尾と角も出した。
目も、いつもよりも紅黒い。
ビリビリと肌が痛いくらい威圧感を感じる。
何もされていないのに冷や汗が止まらない。
そんなロスにクロムは呑気に「久しぶりだな。本性出すの」と呟いた。
「まっ、この位の悪魔だ。そこらの魔物は下手に入れない。入ったら…死ぬからな」
ロスは手のひらで何かを作っている。
ビッ
「!?」
いきなりクロムが俺の目の前に指を指した。そして、上にあげたかと思うとロスの方を指した。
「えっ!?」
俺は驚愕した。
先程まで見えなかったロスの手のひらには赤黒いバリアの様な物が出来ていたからだ。
「んじゃ~、クロム。わりーけど、見せてやって」
ロスはそう言うとクロムは黙って頷き、指をそのバリアの方に持っていった。
バリアと指が触れた瞬間だった。
ーーチリッ
その音と共にクロムの人差し指は宙を舞い、床にコロリと転がった。
「!!!」
俺は何がなんだか分からなかった。
そんな俺に「まっ、こんなわけよ」とロスが言った。
「えっ!?なっ…!」
その結界のことはよーくわかった。
だが…
「くっ…クロム…!指…っ!」
これまた呑気に自分の人差し指を拾い上げるクロムに指を指しながら言った。
指が…切り落とされた…!?
いくら怪我に耐久があるからといって…指がなくなったら…!
なくなった証拠にクロムの人差し指の付け根からは血がボタボタと垂れて床に染みを作っていく。
焦る俺に二人は顔を見合わせて「…あれ?言ってなかったっけ?」とロスが聞いた。
「えっ…?」
焦る俺を他所にクロムはなくなった人差し指をテープで固定したあと、口と片手を使って器用に包帯を巻き付けた。
「俺は体の一部が取れても固定してれば1日でくっつくんだよ」
固結びをしてキュッと縛り付けるとクロムは当たり前のように言った。
「くっ…くっつくって…」
「俺は体が木っ端微塵になったり、溶岩とかあんな風に一瞬で無くならない限り大抵の傷は全て治る」
「そうそう。何せ俺と契約してるからねー」
ロスは手のひらで作った結界を消し、人間の姿に戻りながら言った。
「でっ、でも!痛みはあるんで…しょ?」
「当たり前だろ。痛覚は遮断されてねぇよ」
「だったら…」
指がとれるくらいなら、きっと麻酔なしに歯を抜かれるよりも痛いはず…。
そう思っていたのだが…。
「…別に。少し切れただけだろ」
クロムは全く気にしていない様子だった。
指がもげたのに“少し切れただけ”。
本当に信じられない。
でも、大丈夫ということは大丈夫なのだろう。
「まー、こんな訳で結界を張ってるから大丈夫」
ロスは相変わらずニコリと微笑んだまま言った。
「でも、それなら俺たちは危ないんじゃ…」
そんな心配を他所に、ロスは「大丈夫ー。俺の結界に反応するのは敵意を持った魔物だけだから」と説明する。
「そう…なんだ」
「そー。だから、ここへの奇襲は心配しなくてOKだよ」
改めてロスは凄いと思った。
そんなものまで、作れるなんて…。
「まっ、そう言うことだ。後は…こいつが目覚めんのを待って説明してもらう事だな」
取れた人差し指をみながらクロムは呟いた。
そこで、麗弥を運ぶ途中だったのを思い出す。
「そうだね。とりあえず、麗弥が目覚めるのを待つしかないね 」
「そーだなー。まっ、また稀琉ん時みたいに見に行くけど目が覚めたら教えてな~。そん時に教えて貰うから」
ロスはそう言うと背伸びをした。
麗弥…。
眠る麗弥の事を見て考え込む。
仮説ではあるが、稀琉たちにもいつ奇襲がかかるか分からない。
そう考えると心配で仕方がない。
…稀琉になんて言おうか。
きっと落胆するであろう稀琉の事を考えながら、俺は大きなため息をついた。
麗弥の手術は無事に終わった。
やはり左足は膝から下が驚くほどポッキリと綺麗に折れ、その上少し肉を食いちぎられた様な跡もあった。
左肩は食いちぎられてはいないが、何か大型生物に噛まれたような後があった。
麗弥は醜鬼。
少し時間はかかるが、常人なら最早歩くことは不可能なこの傷でも綺麗に治るだろう。
手術が終わり、麗弥を治療用の部屋に移すとクロムとロスが入ってきた。
「終わったか」
クロムの言葉に頷く。
「酷い怪我だった。筋肉組織はメチャクチャで…骨は綺麗に真っ二つ。でも…」
「醜鬼になった、麗弥なら大丈夫っしょ。ノーマルならもう無理だけど。醜鬼にこんな利点があったとはね」
ロスは呑気にそう呟いた。
「…それで、犯人は…」
クロムとロスはチラリと石川さんを見た。
…石川さんの前では言いづらいことなのか…。
しかし、こう何度も大怪我をするこの子達のことを…黙っていることはもう出来ない。
俺は黙って頷くとクロムとロスは口を開いた。
「俺達がこのバカを見付けたときには既にこの怪我を負ってた。…間違いなく人間の仕業じゃない」
「多分、狼族と…それだけ綺麗に足を…それも何も抵抗をしていないとこを見ると人形使いもいるだろうな」
クロムとロスの口から出た非現実的な言葉に石川さんは信じられないといった顔をした。
そんな石川さんに俺は「そこら辺のことは追々話すから」と伝えると、石川さんは「わかりました」と黙って話を聞いてくれた。
「殺さずにカフェの前にこいつを置いてきたのは…理由があるはずだ。…多分、いつでもこう出来るぞという脅しだな」
「っ…」
脅しにしては酷すぎる。
稀琉の兄はそれほどまで…稀琉を苦しめたいのか…。
その時、部屋に設置されている黒いベルが鳴った。
これは、black roomへの要請であろう。
だが、今は席をはずす訳にはいかない。
俺は石川さんに頼んだ。
「石川さん。俺の代わりに…依頼人と話をして来てくれないかな。金額とかは覚えているよね?オーナー代理として頼めないかな」
「えぇ、それは構いませんが…俺に貴方の代わりが勤まるでしょうか…」
石川さんは、少し不安げだったが「大丈夫だよ。代理としてと伝えれば」と言うと「分かりました」と言って頭を下げてから部屋から出ていった。
「なんだよ。あの従業員気にいってんのか?」
クロムがぶっきらぼうに聞く。
「うん。あぁ、見えて俺より年が若いけど…落ち着いてるし」
「えっ、彼はそんな若いの?」
ロスが驚いたように聞く。
確かに石川さんは落ち着いた雰囲気である。
ロスが驚くのも無理はない。
「そうだよ。彼は20歳」
「もっとフケてるのかと思ってた~。刹那がさん付けで呼ぶから」
「あぁ…なんとなくそう呼んでいただけ」
そんな他愛のない話をしていると、クロムが痺れを切らしたように話を元に戻した。
「アイツの年なんかどうでも良い。とにかく根城はバレたと言うことだ」
「じゃあ、なんで奇襲をかけないんだ?」
俺が不思議に思ってるとクロムは面倒臭そうに答えてくれた。
「入らないんじゃなくて、入れないんだろ」
「えっ?」
どういうことだ?
入れないって…
更に頭の上に?を出しているとまたクロムが面倒くさそうに説明した。
「…不思議だと思ったことないか?俺らが人間でない奴に狙われたとき…奴等は俺らがここから出たときにしか襲ってこなかったのは」
「!」
そういえば、そうだ…。
麗弥や稀琉の姿を知っていたということは…この場所だってバレていいはずなのに…。
「それはな。こいつが、ここにでっけえ結界張ってるからだよ」
そう言うとクロムは、親指でロスを指した。
「ロス…が?」
ロスを見るとニコリと笑って羽を出した。
犬歯が鋭くなる。
更に普段は絶対に出さない尻尾と角も出した。
目も、いつもよりも紅黒い。
ビリビリと肌が痛いくらい威圧感を感じる。
何もされていないのに冷や汗が止まらない。
そんなロスにクロムは呑気に「久しぶりだな。本性出すの」と呟いた。
「まっ、この位の悪魔だ。そこらの魔物は下手に入れない。入ったら…死ぬからな」
ロスは手のひらで何かを作っている。
ビッ
「!?」
いきなりクロムが俺の目の前に指を指した。そして、上にあげたかと思うとロスの方を指した。
「えっ!?」
俺は驚愕した。
先程まで見えなかったロスの手のひらには赤黒いバリアの様な物が出来ていたからだ。
「んじゃ~、クロム。わりーけど、見せてやって」
ロスはそう言うとクロムは黙って頷き、指をそのバリアの方に持っていった。
バリアと指が触れた瞬間だった。
ーーチリッ
その音と共にクロムの人差し指は宙を舞い、床にコロリと転がった。
「!!!」
俺は何がなんだか分からなかった。
そんな俺に「まっ、こんなわけよ」とロスが言った。
「えっ!?なっ…!」
その結界のことはよーくわかった。
だが…
「くっ…クロム…!指…っ!」
これまた呑気に自分の人差し指を拾い上げるクロムに指を指しながら言った。
指が…切り落とされた…!?
いくら怪我に耐久があるからといって…指がなくなったら…!
なくなった証拠にクロムの人差し指の付け根からは血がボタボタと垂れて床に染みを作っていく。
焦る俺に二人は顔を見合わせて「…あれ?言ってなかったっけ?」とロスが聞いた。
「えっ…?」
焦る俺を他所にクロムはなくなった人差し指をテープで固定したあと、口と片手を使って器用に包帯を巻き付けた。
「俺は体の一部が取れても固定してれば1日でくっつくんだよ」
固結びをしてキュッと縛り付けるとクロムは当たり前のように言った。
「くっ…くっつくって…」
「俺は体が木っ端微塵になったり、溶岩とかあんな風に一瞬で無くならない限り大抵の傷は全て治る」
「そうそう。何せ俺と契約してるからねー」
ロスは手のひらで作った結界を消し、人間の姿に戻りながら言った。
「でっ、でも!痛みはあるんで…しょ?」
「当たり前だろ。痛覚は遮断されてねぇよ」
「だったら…」
指がとれるくらいなら、きっと麻酔なしに歯を抜かれるよりも痛いはず…。
そう思っていたのだが…。
「…別に。少し切れただけだろ」
クロムは全く気にしていない様子だった。
指がもげたのに“少し切れただけ”。
本当に信じられない。
でも、大丈夫ということは大丈夫なのだろう。
「まー、こんな訳で結界を張ってるから大丈夫」
ロスは相変わらずニコリと微笑んだまま言った。
「でも、それなら俺たちは危ないんじゃ…」
そんな心配を他所に、ロスは「大丈夫ー。俺の結界に反応するのは敵意を持った魔物だけだから」と説明する。
「そう…なんだ」
「そー。だから、ここへの奇襲は心配しなくてOKだよ」
改めてロスは凄いと思った。
そんなものまで、作れるなんて…。
「まっ、そう言うことだ。後は…こいつが目覚めんのを待って説明してもらう事だな」
取れた人差し指をみながらクロムは呟いた。
そこで、麗弥を運ぶ途中だったのを思い出す。
「そうだね。とりあえず、麗弥が目覚めるのを待つしかないね 」
「そーだなー。まっ、また稀琉ん時みたいに見に行くけど目が覚めたら教えてな~。そん時に教えて貰うから」
ロスはそう言うと背伸びをした。
麗弥…。
眠る麗弥の事を見て考え込む。
仮説ではあるが、稀琉たちにもいつ奇襲がかかるか分からない。
そう考えると心配で仕方がない。
…稀琉になんて言おうか。
きっと落胆するであろう稀琉の事を考えながら、俺は大きなため息をついた。