Devil†Story
ーーミシェル&ソルトが奇襲をかけてから7時間後。


「ん…」


スッと紫色の瞳が開いた。


「アレ…俺、何してたんやっけ」

ムクリと体を起こそうとした時…


「つっ…!」


左肩、足に激痛が走った。


それで、思い出した。


「そうや…あの2人に…やられたんや…」


鏡に写る自分は包帯まみれ。


「つっ…」


痛みで、出した声ではない。


何も…できひんかった…


それどころか…稀琉を苦しめる道具にされたんや…。


クソッ…


畜生……!!


ガンッ!


右手で壁を殴る麗弥。


悔しくて堪らないのだ。


大丈夫だって言った側から…こんなことになるなんて…!!


「つっ…。ゴメン、な。稀琉…」


今にも消えそうな声で麗弥はそう呟いた。




それから、暫くして刹那、クロム、ロスが部屋に入ってきた。


その前に刹那が麗弥の様子を見に来てて、目が覚めた麗弥のことを2人に伝えたからだ。


「クロム、ロス…」


「よっ。目が覚めたんだな。良かった」


ロスがニコリと笑う。


「あっ、うん…。おおきにな、クロム、ロス…」


明らかに元気がない麗弥の様子にクロムはピクリと眉を動かした。


「それで…一体、何が…」


刹那が問い掛けた時だった。

ガチャッ!

勢いよく扉が開いた。



「稀琉…」


そこには、息を切らした稀琉が立っていた。


稀琉は、まだ怪我が完治していた訳ではなかったので今回は裏の仕事というよりも近くに身寄りのない高齢者の相手に1日滞在という平和な任務であった。


そこから帰ってきた稀琉に石川が麗弥の事を教えたという訳だった。


「麗弥…!」


駆け寄ってくる稀琉。


麗弥の傷を見て顔を歪める。


「あっ、大丈夫やで?見た目より痛みはあらへんから」


慌てて嘘をつく麗弥。


本当は、まだ激痛が走る。


でも、心配させたくなくて咄嗟に嘘をついたのだ。


それでも、稀琉の表情は暗い。


その様子にクロムは、眉間にしわを寄せた。


そんなクロムを見てロスは、沈黙を破るように麗弥に先程刹那が聞きかけた質問をぶつけた。


「それで…稀琉も来たし…何があったか教えてくれない?」


ロスの問いに麗弥は、ぐっと唇を噛んでから答えた。


「実は……俺、ストーカー撃退の任務してて…それが終わったあとに…2人の…俺等より少し下位の…2人組に会ったんや。どっちも金髪にぱっつんで…1人が男の子で、今、流行りのV系の格好をしたソルトって名前の子で、もう1人がゴスロリみたいな格好したツインテールのミシェルって名前の女の子やった」


「V系…?ゴスロリ…?」


頭に?がついているクロムとロスに刹那が「V系って言うのがヴィジュアル系の略で、ロックバンドやミュージシャンの様式の1つで派手な格好のことで、まぁ、クロム達が着てるようなコートみたいに黒っぽくて格好いい装飾がされてる様なファッションで、ゴスロリはゴシックロリータで、フランス人形みたいな格好を黒っぽくした感じのファッションのことだよ。まぁ、簡単に言うと昔のイギリスの貴族が着てそうなやつをイメージしてくれるといいかな」と説明してくれた。


2人のコートは、ロスはファーがクロムがフードが欲しいということ以外は刹那に任せていたので、デザインは殆ど刹那のデザインである。

2人には似合うと思って刹那は派手ではないが、それに似たようなデザインにしていたので2人は知らなかったのだ。


「あー、こーゆーのか」


ロスが、自分のコートを見て納得していた。


「そう…。初めは普通に話しかけてきたんやけど…。急に空気が変わったかと思ったらもう1人…首にツギハギのような傷のある銀髪の男が頬に攻撃してきたんや。それで、敵かと思って…銃を構えて応戦しようとしたんやけど……やられた」


ギュッとシーツを握りしめながら麗弥は悔しそうに呟いた。


「…やられた?相手はガキとその男だけだったんだろ?それでお前がやられたって言うのか?」


「一瞬やった…。自分でも、今でも信じられへんけど…。そのミシェルっていう女の子が人形に…後から出てきた銀髪の男が俺の頬を傷付ける時に抜いたっていう…髪の毛を入れてその人形の足を折ったら…俺の足も折れてた」


「!」


4人はその発言に反応する。


クロムがロスを見るとロスは頷いた。


やはり、人形使いだったか…。


ロスは、心で確信した。


「それで…足を折られて動けない俺は、また信じられない光景を見た…。今度はソルトっていう子が…俺の目の前で、狼に変身したんや…」


「えっ…!?」


稀琉は信じられないと言った表情である。


当たり前だろう。


その前のミシェルの攻撃ですら、信じられない物なのだから。


「ほんま信じられへんけど…狼に変身したそいつは…俺の左肩と左足を…噛んで、左足は…咬み千切ったんや…。そんとき…あいつらは言ったんだ…。早く琉稀様のところにこないと…いつでも、お前らを同じようにできるんだって…」


「!!!」


最悪の予想が当たってしまった。


稀琉が、早く琉稀の所へ来なければ…クロムやロス…下手すると刹那も同じ目に合わせるという脅しであった。


稀琉は、その麗弥の言葉を聞いて動揺していた。



「あいつらは、人間やあらへん…。魔物やっていっとった…。俺の存在や…稀琉の出生のことを聞けば人間だけやないということは…理屈では分かるんやけど…やっぱ信じられへん…でも。あいつらは、その為ならなんでもする。そこに…躊躇なんかあらへんかった…」


「っ…!!」


稀琉は、胸を押さえて固く目を瞑って微かに震えていた。


オレのせいで…!


そんな稀琉に、慌てて麗弥は言う。


「あっ、でも、稀琉せいやあらへんよ?俺が油断してたのが悪いんやから!」


「っ…。ゴメン、ね。麗弥…!」


バッと稀琉は走り出して部屋を出ていってしまった。


「稀琉!」
「稀琉!!」

麗弥と刹那が呼び掛けたがそのまま扉がしまってしまう。


「ちょっと、稀琉のとこ行ってくるね!」


刹那はそう言うと追いかけた。


ロスは、チラリとクロムを見た。明らかに不機嫌そうであるクロムから目を離してからから「俺も行くよ」と刹那と一緒に稀琉の後を追った。


バタンと扉が閉まる。


そこに残っているのは、クロムと麗弥だけだ。


「稀琉…」


麗弥は、悲しそうに呟いた。


暫く沈黙が続いた。


その沈黙を破ったのは麗弥だった。


「ハァ~…ほんま、アカンわぁ…俺」


片手で頭を押さえながら呟く。


クロムは、壁に寄りかかり腕を組んだまま目だけ麗弥を見る。



「ほんまアカン…。稀琉に大丈夫って言うてこのザマや…弱すぎて…嫌になるわぁ…」


ピクッとクロムの額に青筋が浮かぶ。


「アカンなぁ…俺、こんな弱かったんや…。稀琉傷付ける道具にされるなんてな…」


ギリッとクロムが歯ぎしりしているのにも、気付かず麗弥は、言葉を続ける。


「ほんま…何もできひん、自分が嫌になるーー」


麗弥が、そこまで言い掛けたときだった。


ガンッ!!!!


ビクッ


「おぅ!?」


麗弥が、驚いた。


何故ならクロムが思い切りベッドの端を蹴ったからだった。


「ちょっ!?クロムさん!?俺、怪我人なん…や…けど…」


麗弥は、いつものように突っ込みを入れようとしたがクロムのことを見て言葉を切った。


クロムは、下を向いていて表情こそ分からないが明らかに怒っていたからだ。
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