Devil†Story
ーー2週間後


あの奇襲から2週間経ったが、今のところ稀琉の兄に動きはない。


麗弥の傷も少しずつだがよくなってきている。


流石に、骨折は1ヶ月位はかかりそうだが噛み千切られた場所は大体再生していた。


その間にクロムたちは裏で動いていた。


しかし、刹那の情報網を駆使しても稀琉の兄である琉稀の動向は掴めなかった。


ロスが言うには別空間に根城を作っているのではないかという話だった。


魔物はそれぞれ自分の空間を作る能力を持っている。


それを探し出すのはロスでも空間が閉じたりするする瞬間を見ない限り難しいとのこと。


その為に動向を掴むことが難関となっていた。


もちろんその場所からも、ミシェルは麗弥を操ることは可能である。


なので、クローは刹那の側を頑なに離れなかった。


その間に殆ど寝てはいないだろう。


しかしクロムの言うことを忠実に守っているのだ。


そんな日々が続き、流石にクロムがクローを気遣ってロスと見張りを交代してもらうことにした。


肩にクローをとまらせて、中庭へ出る。


時刻は夕方。


「……」


クロムは、肩にとまっているクローを撫でながらぼーっと中庭の風景を見つめていた。


すると背後から声が聞こえた。


「やぁ、クロム」


振り返るとそこには稀琉が居た。


「…稀琉」


「どうしたの?考え事?」


稀琉がクロムの隣に行きながら聞いた。


「別に。ただ、こんなに奴さんが来ないと思ってなかったからな。クローに無理させ過ぎたから休ませてるだけだ」


クローを見てみるとクロムに撫でて貰えて嬉しいのか、目を瞑りながらうつらうつらとしていた。


「そっか。2週間経つもん…ね」


「あぁ」


その時、クローがクロムに頬擦りをしていた。


クロムは、クローを見たがそのまま喉の下を撫でていた。


…なんか、猫みたいで可愛いな。クロー。


ただし、クローがそうするのはクロムだけ。


クロムとクローは小さい頃からずっと一緒に居たと聞いた。


だからか、普段はこの辺りの鴉のボス的存在のクローだが、クロムにはこうして甘えるのだ。


クロムも、その時だけは絶対に拒まずに受け入れている。


「…やっぱり、優しいなぁ」


「はっ?」


思わず口に出た言葉にクロムは何を言ってるんだと言わんばかり聞き返した。


「あっ、いやなんでもないよ。それにしても…本当にクローはクロムが大好きなんだね」


「んー…どうなんだろうな。つーかそれ、前も言ったと思うが…」


「絶対にクローはクロムが大好きだよ。だって、クロムの肩にとまってるクローは安心しきってるもん」


「そーだよねー?」と稀琉がクローを見ながら首を傾げるとクローは「カー」と返事をするかのように鳴いた。


「ほらー」


そういう稀琉にクロムは「さて、ね」と答えた。


クローは、うつらうつらとしているものの寝てはいなかった。


しきりに刹那の居る談話室の方を見ていた。


そんなクローに、クロムは話し掛ける。


「…クロー。少しこのまま寝てろ。寝ないと何かあった時に怪我する。だから、寝ろ」


クロムの言葉にまた返事をするかのように「カー」と鳴くクロー。


稀琉には分からないがクロムは分かっているので答える。


「見張りならロスがしてる。だから、気にしないで寝ろ。いつ寝れるか分からないからな」


クロムのその言葉に安心したのか、クローは目を瞑った。


そしてすぐに眠りにつく。


「寝ちゃった…。やっぱり、疲れてたんだね、クロー」


「本当に最低限しか寝てないだろうからな。夜中までは寝させねぇと。生き物は食わねぇより寝ねぇ方が死ぬからな」


「えっ?そうなの?」


餓死は聞いたことあるけど…ていうか、そういった言葉がある位だから、食べない方が駄目なような気がするんだけど…。


そもそも睡眠を取らなすぎると何死になるんだろうか?


…睡眠死?


いや、過労死かな?


そんなことを考えているとクロムが口を開いた。


「昔、何処だかの国で子犬使って実験したんだと。そしたら、睡眠を取らなかった場合は3日位、食事は10日位で死んだんだと」


「今じゃ動物愛護で捕まるが昔は、そういった実験が当たり前のようにされてたみたいだからな」と涼しげな顔で言った。


「そうなんだ。それにしても、子犬を使うなんて…可哀想だね」


「この国じゃ今でも、猫とかが居なくなって警察に届けると遺失物扱いになるからな。まだまだ人間サマサマの意識がつえーんだろ」


同じ生き物なのに…物扱いされるなんて…オカシイよな…。


まぁ、命を奪う仕事をしているオレが言うのも変な話なんだけど。


「……さむ」


ふと考え事をしていると、クロムが小さく呟いた。


「大丈夫?」


「あぁ…。まだクローが肩にとまってるから暖けぇけど…」


秋も深まってきた今日この頃。


夕方はだいぶ寒く、秋の匂いが、寒さが身に染みて分かるようになってきていた。


「じゃあ、部屋に戻ろっか」


「あぁ。そうするか」


こうして2人は部屋に戻ってきた。


そして、夜中になりクローが見張りに戻って1時間経ったとき…琉稀達は静かに動き出した。
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