Devil†Story
「…こっちの方か?」


段々と街中から離れ、木々が多くなってきた場所を歩いてたクロムがロスに問い掛けた。


「だなー。こっちの方から気配は感じるね」


夜の林は真っ暗で全てを飲み込むような闇で覆われていた。


方角に自信があるクロムでも、葉で月が見えなくなると分かりづらかった。


ロスの言葉に、そのまま森のような暗さの林を歩いていった。



暫くすると林から抜けて、目の前に大きな和風の屋敷が見えてきた。


「ここか」


もう何年も誰も立ち入っていないのだろう。


玄関の前の地面は枯れ葉で埋め尽くされており、外壁は黒くくすんでいた。


立派ではあるが、今や不気味な廃墟と化していた。


「…入るぞ。気を引きしめろよ」


「りょーかい」


ギィィと嫌な音をたてて扉が開かれた。


中に進むと、秋の庭園が顔を覗かせた。


玄関までは誰も住んでいない感じだったが、この庭園はまるでずっと誰かが住んでいて、管理されていたかのような美しさを保っていた。


そして、月明かりしか照らすものがないはずの庭園のあちこちに、まるで蛍が発光しているかのような淡い光があった。


「…植物?」


ロスが近くにあった光を放つ正体の物のところへ近付いた。


クロムも近くに来てその植物を眺めた。


「これは…鬼灯」


発光している物の正体は鬼灯だった。


中の朱色の実が光り、まるで提灯のように光っていた。


「何?これ光る植物なの?」


「いや……本来光るとは聞いたことがないな」


ロスの問いに答えながら、クロムは鬼灯に触れた。


すると、パシッと音がし、外の皮の部分がぼろぼろに朽ち果てていき、光が消えた。


「枯れた?」

パシッと音がなったものの、痛みは感じなかったがその光景に不思議そうに呟く。


「ふーん、にゃるほど」


「何だよ?」


「これさ、稀琉の中にある力と同じ力が溜まってる」


「だから、その力と異質な力である俺の血が入ってるお前を拒絶したんじゃね?」と、別の鬼灯に触れ、同じように力を失った鬼灯を見せた。


「なるほどな。それで…あのバカ2人の気配はあったか?」


クロムの興味はもうないようで、本来の目的の方の話をする。


「んー……こんだけ、この力が充満してるからさ、中々掴めねぇけど……。この力が集まっている場所がある。そこに稀琉の方は居そうだな」


「分かった。さっさと、バカ1を回収するぞ」


美しい庭園を歩きながら、クロムは先に進んだ。


「OK。そっちの方だな」



ロスが指差す方向を確認したクロムは、また前を向いて歩き出す。


暫く歩いていくと、空気が少し重くなった。


「おぉ?」


背後からロスの声が聞こえて後ろを振り替える。


「どうした?」



「いやー、なんか異質な力だからか、急に俺が入るのを拒否してきたみたいだ」


「お前には見えないだろうけど、鎖みたいなやつが俺に巻き付いてるんだ」と、手を広げるロス。


「来るなってか?」



クロムのその問いにロスは「んー……」と少し考えてから答えた。


「いや、そうみたいだけどさ。なんか……稀琉の兄貴が、結界張ってて拒否してるのとはまた違うような」


「どういうことだ?」


「なんか、来るなって言うか何かを守っているような……」


「はっ……。だったらバカ1か?お前と俺を兄貴に近づけさせないようにか?」

「いや〜…それとも違うっぽいけど。どのみち入らなきゃだから壊させてもらうけど」


空中で手を下に払うとクロムには見えないがガラスが割れるような、カシャーンとした音が聞こえた。


「そうも言ってられないからなー。悪いな、稀琉」


ロスは、何事もなかったかのように再び歩を進めた。


「つーことは、バカ1は近いかもな。だったら、さっさと行くぞ」


「つーかバカ1って…誰だよ。稀琉?」


「あんな馬鹿野郎はバカ1で充分だろ」



笑いながら言うロスに振り返りもせずクロムは答えた。


(まーた、怒っちゃってるんだから)


ロスは内心そう思いながらクロムの後ろをついていった。



また暫く歩くと、隠されたように奥にあった扉を見つけ、そこを潜った。


ギィィと嫌な音をたてて開く扉の先には、これまた隠されたように小さな庭と離があった。


その1番奥の部屋が、先程の鬼灯が発していた青白い光でぼんやりと照らされていた。



「あそこか?」



「そうっぽいぜ」


「もし言いなりになってたら……先にぶん殴ってやる」と足早にクロムは、その部屋に向かった。
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