Devil†Story
「よいしょっと」


パキンッと手枷を魔力で壊したロスが倒れ込む稀琉を抱き抱える。


「おーおーこれは。かなーり熱出てんなァ」


額に触れながらロスが呟く。床に寝せて、コートを脱いで稀琉に掛けた。まだ苦しそうだ。


「…まさか。ここに長居するつもりじゃねえだろうな」


コートを掛ける=長居と捉えたクロムが面倒臭そうに言った。


「いやー?部屋から出したから多分呼び掛けても起きると思うよー」


稀琉の額に触れながらロスは答えた。


「…………」


苦しそうにしている稀琉にまた苛立ちを覚えるクロム。本当なら蹴り飛ばして起こしたいところだが…それで起きないことは安易に予想できる。


「…………」


心底嫌そうな顔をしつつクロムは何かと葛藤している様子だった。それに気付いていないロスの「んー……呼びかけって言ってもまぁ意識朦朧って感じだから起きない可能性の方が高いけど。置いていく訳にもいかねぇしな〜」という言葉に大きな溜息をついて組んでいた腕を崩した。


「チッ…」


クロムは舌打ちをした後にしゃがみこんだ。


「おっ?また殴るの?」


少し横に避けながら「だから、あんま殴ると顔が大変なことになるぞ」と言う。


「……おい、稀琉。いい加減起きろ」


「!」


てっきり先程よりも激しく殴ると思っていたロスが僅かに目を大きくさせて驚いた。

その理由は……


左手で稀琉の胸に優しく手を起き、まるで子どもをあやすかのようにとんとんと叩いていた事と、耳元まで顔を近づけ静かに囁いていたからだ。


あのクロムが、こんなことするなんて……。


ロスも初めて見たクロムのその行動。


ロスは黙ってその様子を見ていた。
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