Devil†Story
「ハッ!意気がってもいいことないゼェ?ガリガリ!」


先程まで圧倒されていたスロウスだが、我に返ったように元のように罵声を浴びせる。
スロウスが言っていることは間違いではない。抜けたとはいえ状況は不利であった。


腹部に穴が開いて骨まで折れているのだから。



「ハァ…ハッ……」


呼吸がしづれぇな…。呼吸の度に痛みを感じるところを見ると、折れた肋骨が肺にも刺さってるかもな……。だからってこんなモブに負けるなんてことは絶対にありえねぇ。


見たところ先程の鉄棒以外の武器は持ってない。素手対剣ならリーチも考えると武器的には圧倒的に剣を持つクロムの方が有利だ。

「ゲヘヘ。ぶっ殺してやるから覚悟しろよぉ?」


「言ってろよ。さっさと片して俺は先に行く」


そう言うか否か、出血を気にせず体を動かすクロムは大きく踏み込んで剣を振り上げた。


「うおっ!?」


元と変わらない動きに驚いたのも束の間鎧がついていない左肩から右腰まで切りつけた。


「いってぇ!こんのクソガキーー」


スロウスの言葉を遮るように今度は左に一回転し、腹部を横に切りつけた。


スロウスはクロムを捕らえようと手を伸ばすが、やはりスピードではクロムに勝つことは出来ない。


その後もあちこちを切りつけられた。


「この餓鬼がァ!お調子にのってんじゃねぇぇ!」


目の前にいたクロムに懲りもせず手を伸ばす……が。


クロムはそれをジャンプして避ける。


スロウスの手は空中をかいた。


クルリと空中で向きを変えスロウスの背後にきたクロムは、地面に着地したのと同時に膝裏に蹴りを入れる。


「おぅ!?」


いわゆる“膝かっくん”をされたスロウスはそのまま膝をつく。


そのまま後頭部にも蹴りをいれた。


「ぐおぉ!」


勢いよく顔面から地面に叩き付けられ、鼻を強打していた。


その鼻からは憐れにも鼻血が出ていた。


「うが!チクショー……鼻血が出ちまったじゃねぇかーー」



顔を上げようとしたスロウスだったが、頭に強い圧力が与えられ、再び地面に顔を叩き付けられた。


「ガフッ!」


「ハッ。お似合いだぜ?モブ野郎。まぁ、汗まみれの不潔なてめぇに触れるのは嫌だがな。踏み心地だけはいいな?」


目だけで頭を見るとクロムがスロウスの頭を踏みつけていた。


「クソガキぃ!一体誰の頭を踏みつけてやがる!」


「うるせぇ。……てめぇさっき俺の顔ぶん殴ったよな。それも左頬7回、右頬5回……アッパー3回の計15回」


「おい!何数えてやがる!」


足元で騒ぐスロウスに冷たく言い返す。


「久々に首から上をこんなに殴られて流石に頭に血が上ったんでな?それもこんなデブに。……お礼に10倍返しにしてやるよ」


ニヤリと笑うクロムの顔を見たスロウスの顔から血の気が引いていく。


「まっ!待てよ!!テメェが殴っていいって言ったんだろ!?」


「誰が何回もやっていいって言ったんだ?感情がねぇ人形野郎のてめぇがあんだけ楽しそうにしてたんだ。どれだけ楽しいだろうな?」


更に黒い笑みを浮かべ、ニタリと笑うクロム。


その顔の恐ろしいこと。


慌ててスロウスは言葉を発した。


「いや、待て待て!そ!そうだ!この切り傷の分がーー「その前に俺を振り回した分だ」


クロムは踏みつけていた右足を振り上げた。


もちろん動きが遅いスロウスはそれに対応することが出来ない。


「ちょっ!待てって!!蹴りは反則だろ!?」


「倍返しと言ったはずだ。…更に不細工にしてやるぜ?」


「まっ!待て!!待……ギャアァアアア!」


その後、蹴られは倒れ、蹴られは倒れを暫く繰り返されたスロウスであった。


「おら。もう終いか?」


両頬は真っ赤に腫れ上がり最早蜂に刺されたようになっていた。


「く…クソガキ!俺様をこんな目にあわせてただで済むと思うーーゲハッ!」


床から立ち上がろうとしたスロウスの頭を踏みつける。


「なんだって?しかしここまで楽しめるとは思わなかったぜ?」


「こっ……の……!」


ダンッと地べたに手をつく。


「うがー!!!いい加減にしろぉぉぉ!!」


何度も頭を踏みつけられ、怒りが頂点に達したのだろう。


そのままパワーでごり押しし、立ち上がる。


その前にクロムはヒョイと足をどけた。


「ハーハー……テメェは悪魔か!こんなになるまで蹴るなんて!」


「ハァ?俺は悪魔と契約したが悪魔じゃねぇっての。さっきの俺の話、聞いてなかったのかよ。脳ミソにまで脂肪が詰まってんのか?」


更に挑発したクロムの言葉に怒りが爆発したようで、大声で怒鳴り付けた。


「絶対ぶっ殺してやる!!」


そのままタックルしてくるスロウス。


「だから、何回やっても無駄だっつぅの」

突進してきたスロウスを左に避けて剣を振り上げた。


「まぁ、馬鹿に何言っても無駄か。さっさと終いにさせて貰うぜ」


とどめを刺そうと剣を降り下ろした。


これで終わりのはずだったが……



ーーガキィン!


「!」


剣が何かに当たった金属音と、肉が断ち切れていないような感触から手応えがないことに気付く。


見てみると左肩の鎧が傷付き壊れ、多少肩にも剣が刺さっていたがその斬激を受け止めていた。


「ようやく捕まえてやったぜぇ?クソガキ!」


ニッと笑ったスロウスはクロムの右手首を左手で掴んだ。


「!?」


「テメェは動きが速いが、捕まえちまえばこっちのもんだぁ!」


左手で力を入れ、剣を持つ手が緩まったのと同時に右手で剣を奪い去った。


「!」


そして、そのまま地面を蹴り距離をとった。


「ギャハハハ!盗ってやったぜぇ!テメェの武器を!」


「……」


クロムの剣を高々と持ち上げ勝利の雄叫びをあげる。


「いい武器だなぁ?テメェには勿体ないぜぇ!?代わりにこの俺様が使ってやるよ!」


「おい」


「あぁん?」


「やめときな。その剣はてめぇみたいな出来損ないが使う代物じゃない。離した方が身のためだぜ」


そう忠告するクロムの言葉に下品に笑いながらスロウスは言い返した。


「はぁ?なーにが、身のためだぜだぁ?武器を盗られたから今度は脅そうって?誰がそんなひっかけにひっかかるかよ!」


「嘘じゃない。最近、そいつにきちんと吸わせてなかったからな」


「何を言ってーー」


そこまで言った瞬間、剣を持っていた手の手首にチクリとした痛みと違和感を感じ見た。


それを見たスロウスは驚くべき光景を目の当たりにした。
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