Devil†Story
その頃、ある廃工場の倉庫の中。


ジャラ…


「あー…やってもうたわー…」


埃が舞う廃墟の中で壁に手錠で捉えられている眼帯の少年が特徴的な言葉遣いで呟いた。頭から出血していたのか額から頬にかけて血の跡が着いていた。口内も切ったのか口の端にも血液が付着している。誰が見ても暴行されたのは明白であった。


「でかい声出したところで助けが来るとは思えへんし…もっと痛ぶられたらたまったもんやないしなぁ…」


チラリと自分を拘束している手錠を見て溜め息をつく。動く度に手錠から金属音が鳴る。廃墟の中で聞こえるのは少年の独り言とその金属音だけであった。


「あんなんで捕まるなんて…はー…油断したわ」


顔を上げて穴の開いた屋根から空を見上げた。空は暗く星が見えている。もうすっかり夜だ。


「この状態やと連絡もできへんしなー…。そもそも荷物全部盗られしもうたしGPSも期待でけへん。どないしたらえぇんやろ」


ずっと話し続けるが誰かに語りかけているわけではない。ただ独り言を言っているのだ。


「あー腹減った…。本当なら今頃美味いもん食えてたはずだったのに…」


それでも呟き続けるのはそうでもしていないとやっていられないからだ。


「あー…誰か迎えに来てくれへんかなー…」



「はぁ…」と何度目か溜め息をつきならそう呟いた。悲しいことにその全ての呟きは埃っぽい廃墟に吸い込まれているだけだった。
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