Devil†Story
「なんだ?」
「……」
「お願い!助けて!」
「しつけぇぞ!」
どうやら少年は男に助けを求めている様子だった。しかし明らかに穏やかな雰囲気ではない。普通なら萎縮してしまう怒鳴り声にも負けず必死に助けを求めていた。
「健気だね〜。…相手も見ずに。何をそんなに助けて欲しいんだか」
「……」
呑気なロスとは対照的にクロムは鋭い目つきで様子を見ていた。よく見ると少年の体は僅かに震えていたからだ。本当は怖いのを我慢してまで大人に助けを求めないとならない状況に追い込まれているのだ。
「まっ俺等には関係ないな。可哀想だけど麗弥みたいに余計な事に首突っ込んでる暇ねぇし」
ロスがそう言って歩き出す。クロムは返事をせず様子を見ていたがすぐロスの後ろ姿を見て歩き出そうとした。次の少年の発言で事態は一変した。
「お願いします!麗弥お兄ちゃんを助けて!!」
「「!」」
知っている人物の名前が出たことでロスの動きが止まる。再び少年の方を向くと必死に男の手を掴み「悪い奴に捕まっちゃったんだ!早くしない死んじゃうかもしれない!」と訴えている。しかし男はついに堪忍袋の尾が切れたようだった。
「さっきから訳わかんねぇこと言いやがって!いい加減にしやがれ!!」
「あっ…!」
肩を強く押されて尻餅を着いた。それだけではなく男は腕を振り上げた。それを見た少年は反射のように頭を守るように両手を上げた。
「おっと!」
ロスがそう言った時には既にクロムは体を2人の方に向けて僅かに姿勢を低くしていた。
「しつこいガキが!痛い目にあわねぇと分からねぇんだな!次は相手を見て助けを求めるんだな!バカが!」
「ッ!!」
振り上げられた拳が少年に向かう。来るであろう衝撃に少年が目をぎゅっと閉じて体を強張らせた時だった。
「いで!」
「…?」
男の痛がる声に目を開けると片膝を着いて足を摩る男の姿が映った。その斜め後ろにクロムが立っていた。どうやら男の膝裏に蹴りを入れたようだった。男を冷ややかな目で一瞥してから今度は男の子を見た。
「……!」
少年は思わず息を飲んだ。長く青みを帯びている髪の毛が風でふわりとなびいている。その紅黒い瞳は透き通っているとはまた違う輝きを放っていた。
ーー綺麗。
少年は自身が危険な目にあっているのにも関わらず直感的にそう感じていた。
「クソッ!なんだ!?この…!」
男は後ろを振り返りクロムを睨み付ける。
「膝カックンしやがって!ヒーローにでもなったつもりか!?このクソガキが!」
何も言わずに再び男を見るクロム。その瞳は少年のものに向けられたものとは違い、まるで汚物でも見ているような凍てついた目だった。
「ケッ!たまにいるんだよな!てめぇみたいな正義ぶってやがる"女"が!」
ーーブチッ
「ブッ」
クロムの血管が浮き出るのと同時にロスが吹き出す。男はクロムのことを女だと思っている様子だった。立ち上がりながら大きな声で喚いている。
「格闘術か何かやってんだろうが女の癖に調子にのるんじゃねぇぞ!!」
再び手を振り上げて殴りかかった。
「危ない!」
少年が悲痛の声をあげるもクロムは怒りのこもった目で男を睨むだけで微動だにしなかった。「このままじゃ叩かれちゃう!」と少年がヒヤヒヤしていた時だった。
ーーガシッ
「!?」
後ろから手を掴まれて振り返ると今度はロスが手を掴んでそれを止めていた。
「まあまあ。落ち着いてよ」
「あぁ!?なんだてめぇ!!この女の彼氏か!?女といい調子のんなよ!!」
再び大きな声で喚く。少年はおろおろと慌てふためいていたがそんな男に対してロスはニコリと笑った。
「彼氏…プッ。いや、ちげぇけどさ。こんな小さな子ども相手に本気になり過ぎだって。後は俺らが話聞くから帰っていいよ」
途中吹き出しそうになりつつ、穏やかにそう伝えるも男は頭に血が昇っているようで尚も吠えていた。
「あぁ!?ふざけんのも大概にーーいっ!?」
言葉の途中で男の表情が変わった。理由は簡単だ。ロスが力を込めたからだ。ミシミシと骨が軋む程力を込められ思わず顔をしかめる。そのまま少し男の腕を引いたロスは低い声で囁きかけた。
「…聞こえなかったか?俺は"帰れって"言ったんだよ。いつまでも犬みてぇに吠えるならーーこの腕折るだけじゃなくて二度と歩けなくしてやるぞ?」
ーーゾクッ
その声に背筋に寒いものが走った。恐る恐るロスの表情を見るとその目が爛々と紅黒く光っていた。直感的に相手にしてはいけないと感じた男は一気に縮こまった。それを見たロスは満足そうに笑うと「分かればいいんだよ。じゃあさよーなら〜」と手を離す。
「ッ!クソッ」
男は糸が切れたように前のめりになりながら走り出す。そのままクロムの横を通り過ぎようとした時だった。
「うぉ!?」
派手な音を立てて盛大に転倒した。
「あらら」
「えっ?」
ロスは呆れたように両手を上げて頭を左右に振った。少年は初めこそ何が起こったか分からなかったがすぐに何があったのか理解した。クロムが足を伸ばして男の足を引っ掛けて転ばせていたからだ。
「いって!」
恐らく鼻血が出ているのだろう。鼻を押さえながら恨みを込めた目でクロムを見た。しかしそれ以上にクロムの表情は冷たく怒りに満ちていた。
「………相手をよく見て喧嘩売るんだな。ゴミが」
「あっ…」
先程少年が男に言われた言葉を使って煽る。煽られたことに気付いた男は顔を真っ赤にして怒っていたがそのまま立ち上がりふらふらになりながら走り去って行った。
「……」
「お願い!助けて!」
「しつけぇぞ!」
どうやら少年は男に助けを求めている様子だった。しかし明らかに穏やかな雰囲気ではない。普通なら萎縮してしまう怒鳴り声にも負けず必死に助けを求めていた。
「健気だね〜。…相手も見ずに。何をそんなに助けて欲しいんだか」
「……」
呑気なロスとは対照的にクロムは鋭い目つきで様子を見ていた。よく見ると少年の体は僅かに震えていたからだ。本当は怖いのを我慢してまで大人に助けを求めないとならない状況に追い込まれているのだ。
「まっ俺等には関係ないな。可哀想だけど麗弥みたいに余計な事に首突っ込んでる暇ねぇし」
ロスがそう言って歩き出す。クロムは返事をせず様子を見ていたがすぐロスの後ろ姿を見て歩き出そうとした。次の少年の発言で事態は一変した。
「お願いします!麗弥お兄ちゃんを助けて!!」
「「!」」
知っている人物の名前が出たことでロスの動きが止まる。再び少年の方を向くと必死に男の手を掴み「悪い奴に捕まっちゃったんだ!早くしない死んじゃうかもしれない!」と訴えている。しかし男はついに堪忍袋の尾が切れたようだった。
「さっきから訳わかんねぇこと言いやがって!いい加減にしやがれ!!」
「あっ…!」
肩を強く押されて尻餅を着いた。それだけではなく男は腕を振り上げた。それを見た少年は反射のように頭を守るように両手を上げた。
「おっと!」
ロスがそう言った時には既にクロムは体を2人の方に向けて僅かに姿勢を低くしていた。
「しつこいガキが!痛い目にあわねぇと分からねぇんだな!次は相手を見て助けを求めるんだな!バカが!」
「ッ!!」
振り上げられた拳が少年に向かう。来るであろう衝撃に少年が目をぎゅっと閉じて体を強張らせた時だった。
「いで!」
「…?」
男の痛がる声に目を開けると片膝を着いて足を摩る男の姿が映った。その斜め後ろにクロムが立っていた。どうやら男の膝裏に蹴りを入れたようだった。男を冷ややかな目で一瞥してから今度は男の子を見た。
「……!」
少年は思わず息を飲んだ。長く青みを帯びている髪の毛が風でふわりとなびいている。その紅黒い瞳は透き通っているとはまた違う輝きを放っていた。
ーー綺麗。
少年は自身が危険な目にあっているのにも関わらず直感的にそう感じていた。
「クソッ!なんだ!?この…!」
男は後ろを振り返りクロムを睨み付ける。
「膝カックンしやがって!ヒーローにでもなったつもりか!?このクソガキが!」
何も言わずに再び男を見るクロム。その瞳は少年のものに向けられたものとは違い、まるで汚物でも見ているような凍てついた目だった。
「ケッ!たまにいるんだよな!てめぇみたいな正義ぶってやがる"女"が!」
ーーブチッ
「ブッ」
クロムの血管が浮き出るのと同時にロスが吹き出す。男はクロムのことを女だと思っている様子だった。立ち上がりながら大きな声で喚いている。
「格闘術か何かやってんだろうが女の癖に調子にのるんじゃねぇぞ!!」
再び手を振り上げて殴りかかった。
「危ない!」
少年が悲痛の声をあげるもクロムは怒りのこもった目で男を睨むだけで微動だにしなかった。「このままじゃ叩かれちゃう!」と少年がヒヤヒヤしていた時だった。
ーーガシッ
「!?」
後ろから手を掴まれて振り返ると今度はロスが手を掴んでそれを止めていた。
「まあまあ。落ち着いてよ」
「あぁ!?なんだてめぇ!!この女の彼氏か!?女といい調子のんなよ!!」
再び大きな声で喚く。少年はおろおろと慌てふためいていたがそんな男に対してロスはニコリと笑った。
「彼氏…プッ。いや、ちげぇけどさ。こんな小さな子ども相手に本気になり過ぎだって。後は俺らが話聞くから帰っていいよ」
途中吹き出しそうになりつつ、穏やかにそう伝えるも男は頭に血が昇っているようで尚も吠えていた。
「あぁ!?ふざけんのも大概にーーいっ!?」
言葉の途中で男の表情が変わった。理由は簡単だ。ロスが力を込めたからだ。ミシミシと骨が軋む程力を込められ思わず顔をしかめる。そのまま少し男の腕を引いたロスは低い声で囁きかけた。
「…聞こえなかったか?俺は"帰れって"言ったんだよ。いつまでも犬みてぇに吠えるならーーこの腕折るだけじゃなくて二度と歩けなくしてやるぞ?」
ーーゾクッ
その声に背筋に寒いものが走った。恐る恐るロスの表情を見るとその目が爛々と紅黒く光っていた。直感的に相手にしてはいけないと感じた男は一気に縮こまった。それを見たロスは満足そうに笑うと「分かればいいんだよ。じゃあさよーなら〜」と手を離す。
「ッ!クソッ」
男は糸が切れたように前のめりになりながら走り出す。そのままクロムの横を通り過ぎようとした時だった。
「うぉ!?」
派手な音を立てて盛大に転倒した。
「あらら」
「えっ?」
ロスは呆れたように両手を上げて頭を左右に振った。少年は初めこそ何が起こったか分からなかったがすぐに何があったのか理解した。クロムが足を伸ばして男の足を引っ掛けて転ばせていたからだ。
「いって!」
恐らく鼻血が出ているのだろう。鼻を押さえながら恨みを込めた目でクロムを見た。しかしそれ以上にクロムの表情は冷たく怒りに満ちていた。
「………相手をよく見て喧嘩売るんだな。ゴミが」
「あっ…」
先程少年が男に言われた言葉を使って煽る。煽られたことに気付いた男は顔を真っ赤にして怒っていたがそのまま立ち上がりふらふらになりながら走り去って行った。