Devil†Story
「おーおー逃げ足はえー。あそこまでコケにされて睨むだけってのが小物だな〜。…ていうかお前さ。折角俺が"逃して"やってんだから足引っ掛けて転ばせんなよ」
逃げていく男を見ながら呆れたような声をあげる。
「……別に。たまたま足を伸ばしたらあいつが勝手に引っかかってコケただけだ」
腕を組んで面倒くさそうに返す。そんなクロム達を見て唖然としていた少年だったがハッとして立ち上がる。
「あ、ありがとう」
少年の声にロスは振り返りニコリと優しい笑みを浮かべた。
「どういたしまして。怪我ないか?」
「うん。ちょっとお尻が痛いけど大丈夫」
「なら良かった。さっきの話聞かせてくれる?」
ロスはしゃがんで目線を合わせてから首を傾げて聞く。その質問で自身の目的を思い出した少年は再びハッとしてしゃがんでいるロスの肩を掴んだ。
「そっそうだ!僕の友達のお兄さんが悪い奴に攫われたんだ!どっどうしよう!?」
その細い体のどこにそんな力があるのかと思う程、ゆさゆさと激しく体を揺らす。あまりにも勢いがある少年に「おっおーい。ちょっ、ちょっと落ち着いて〜」とロスは落ち着かせようと言葉をかけるが揺らされて言葉が上手く伝わっていなかった。パニックになっている少年を見たクロムが近寄り、頭にポンと手をのせた。ビクリと肩を震わせてクロムの方を見る。
「おー…クラクラする〜…」と目をまわしているロスをよそにクロムはじっと少年の目を見た。
「…落ち着け。話なら聞いてやる」
クロムにそう言われ少年は始めて自分が息が切れるほど慌てていたのかを気付き、少し冷静さを取り戻した。大きく息を吸ってゆっくりと吐き出すのを繰り返す。その間、クロムは動かずに少年が落ち着くのをただ待っていた。やがて「…ごめんなさい」と素直にロスに謝罪した。
「いいえ〜。話せそうか?」
少年は大きく頷いた。それを見届けたクロムは肩から手を離し先程と同じ位置に戻った。
「あのね。僕、麗弥お兄ちゃんと今日夕方に会う予定あったの。それでお話しして別れたんだけど…僕、麗弥お兄ちゃんに渡そうと思ってたプレゼントを渡すの忘れてたことに気づいて…追いかけたんだ。そしたら女の人と眼鏡かけた人が麗弥お兄ちゃんを抱えて連れて行くところが見えたの。それで何処かに連れていかれちゃった…だから僕なんとかしないとと思って…」
子ども特有のゆっくりとした話だったがロスは頷きながら話を聞いていた。カラスから聞いた話しよりも少し後の話しであった。幸いな事に少年は先程クロム達が見た死体を目にしていなかったようだ。
「そうだったんだ。因みに君が言ってるお兄ちゃんって右目に黒の眼帯つけてて面白い話し方する?」
「そう!お笑い芸人さんみたいな話し方してるよ!もしかしてお兄ちゃん達麗弥お兄ちゃんの事を知ってるの!?」
ロスの問いにキラキラと輝く瞳を向けながら尋ねる。その瞳を見て「お〜眩しい目」と思いながらロスは頷いた。
「そうそう。丁度探してたんだよ。他に麗弥を連れ去った2人の特徴覚えたりする?」
「特徴?」
「あー…言葉が難しいのか。えーっと…」
「…男の方は眼鏡かけてたんだろ?女の方は?他の奴と違うところはあったか?見た目じゃなくてもいい。他に覚えてる事あるか?」
「んーとね…眼鏡の人は分からないけど女の人は首に蜘蛛の絵が描いてあったよ!ハロウィンみたいな!」
クロムがロスの言葉に補足すると理解できたようで、意気揚々と答えた。
「なるほど。どっちの方に行ったか見た?」
「うん!噴水がある方に行ったよ!」
そう言って指さす方向はクロム達が入った入口の反対側であった。煌びやかな入口とは裏腹に繁華街や怪しい取引が行われる路地裏がある町裏に近い入口であった。
「OK。ありがとな。後は俺達に任せて」
そう言って頭を撫でようと手を上げると一瞬少年の体が硬直したように見えたがロスの手が頭に優しく触れ撫でられると嬉しそうにしていた。
「本当!?でも大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!俺達強いから」
親指を少年の方へ向けニッと笑った。2人が強いのは先程の男とのやりとりを目の前で見て、知っていたので安心したように肩の力を抜いた。そしておずおずとクロムの方を見ると駆け寄って行った。
「あの」
少年の呼び掛けに顔だけ向ける。琥珀色とでも言うのだろうか。その透き通った目が恥ずかしそうにこちらを見つめていた。
「さっきは助けてくれてありがとう」
「…別に。礼なんていい」
ぶっきらぼうに返すクロムとは対照的に少年は少し興奮したように言葉を続けた。
「あんなかっこいい膝カックン初めて見た!それにあんなに強そうな人に足を引っ掛けて転ばせるの凄かった!」
子どもらしい感想に「いや…そんなんじゃない」とクロムが困ったように頭を掻きながら答える。しかし次に少年の口から飛び出してきた言葉は衝撃的なものであった。
「本当に凄かった!強いんだね!お姉ちゃん!!」
キラキラとした眼差しを向けた少年は悪意のない顔でとんでもないことを言い出した。先程までの困った表情から一変しクロムの動きが止まった。
「……は?」
「ブッ!〜ッ!!」
その少年の言葉にロスは吹き出した後、腹を抱えて前のめりになって震えていた。笑いを堪えていたのだ。対してクロムは信じられないと言った表情をしている。
「?僕変な事言っちゃった?」
キョトンと首を傾げながら聞く少年の表情は眩しいほど純粋であった。その少年の反応が更にツボに入ったのかロスは爆笑し始めたのであった。
「どいつもこいつも…!いいか!俺は男だ!」
笑い転げているロスを睨みつけながらクロムは少年に自身の性別を大声で伝える。
「……えー!?」
それに加えて少年も少しの間の後に驚きの声を上げた。暗くなった公園内に笑い声と驚きの声が聞こえると言う妙なことが起こっていた。
逃げていく男を見ながら呆れたような声をあげる。
「……別に。たまたま足を伸ばしたらあいつが勝手に引っかかってコケただけだ」
腕を組んで面倒くさそうに返す。そんなクロム達を見て唖然としていた少年だったがハッとして立ち上がる。
「あ、ありがとう」
少年の声にロスは振り返りニコリと優しい笑みを浮かべた。
「どういたしまして。怪我ないか?」
「うん。ちょっとお尻が痛いけど大丈夫」
「なら良かった。さっきの話聞かせてくれる?」
ロスはしゃがんで目線を合わせてから首を傾げて聞く。その質問で自身の目的を思い出した少年は再びハッとしてしゃがんでいるロスの肩を掴んだ。
「そっそうだ!僕の友達のお兄さんが悪い奴に攫われたんだ!どっどうしよう!?」
その細い体のどこにそんな力があるのかと思う程、ゆさゆさと激しく体を揺らす。あまりにも勢いがある少年に「おっおーい。ちょっ、ちょっと落ち着いて〜」とロスは落ち着かせようと言葉をかけるが揺らされて言葉が上手く伝わっていなかった。パニックになっている少年を見たクロムが近寄り、頭にポンと手をのせた。ビクリと肩を震わせてクロムの方を見る。
「おー…クラクラする〜…」と目をまわしているロスをよそにクロムはじっと少年の目を見た。
「…落ち着け。話なら聞いてやる」
クロムにそう言われ少年は始めて自分が息が切れるほど慌てていたのかを気付き、少し冷静さを取り戻した。大きく息を吸ってゆっくりと吐き出すのを繰り返す。その間、クロムは動かずに少年が落ち着くのをただ待っていた。やがて「…ごめんなさい」と素直にロスに謝罪した。
「いいえ〜。話せそうか?」
少年は大きく頷いた。それを見届けたクロムは肩から手を離し先程と同じ位置に戻った。
「あのね。僕、麗弥お兄ちゃんと今日夕方に会う予定あったの。それでお話しして別れたんだけど…僕、麗弥お兄ちゃんに渡そうと思ってたプレゼントを渡すの忘れてたことに気づいて…追いかけたんだ。そしたら女の人と眼鏡かけた人が麗弥お兄ちゃんを抱えて連れて行くところが見えたの。それで何処かに連れていかれちゃった…だから僕なんとかしないとと思って…」
子ども特有のゆっくりとした話だったがロスは頷きながら話を聞いていた。カラスから聞いた話しよりも少し後の話しであった。幸いな事に少年は先程クロム達が見た死体を目にしていなかったようだ。
「そうだったんだ。因みに君が言ってるお兄ちゃんって右目に黒の眼帯つけてて面白い話し方する?」
「そう!お笑い芸人さんみたいな話し方してるよ!もしかしてお兄ちゃん達麗弥お兄ちゃんの事を知ってるの!?」
ロスの問いにキラキラと輝く瞳を向けながら尋ねる。その瞳を見て「お〜眩しい目」と思いながらロスは頷いた。
「そうそう。丁度探してたんだよ。他に麗弥を連れ去った2人の特徴覚えたりする?」
「特徴?」
「あー…言葉が難しいのか。えーっと…」
「…男の方は眼鏡かけてたんだろ?女の方は?他の奴と違うところはあったか?見た目じゃなくてもいい。他に覚えてる事あるか?」
「んーとね…眼鏡の人は分からないけど女の人は首に蜘蛛の絵が描いてあったよ!ハロウィンみたいな!」
クロムがロスの言葉に補足すると理解できたようで、意気揚々と答えた。
「なるほど。どっちの方に行ったか見た?」
「うん!噴水がある方に行ったよ!」
そう言って指さす方向はクロム達が入った入口の反対側であった。煌びやかな入口とは裏腹に繁華街や怪しい取引が行われる路地裏がある町裏に近い入口であった。
「OK。ありがとな。後は俺達に任せて」
そう言って頭を撫でようと手を上げると一瞬少年の体が硬直したように見えたがロスの手が頭に優しく触れ撫でられると嬉しそうにしていた。
「本当!?でも大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!俺達強いから」
親指を少年の方へ向けニッと笑った。2人が強いのは先程の男とのやりとりを目の前で見て、知っていたので安心したように肩の力を抜いた。そしておずおずとクロムの方を見ると駆け寄って行った。
「あの」
少年の呼び掛けに顔だけ向ける。琥珀色とでも言うのだろうか。その透き通った目が恥ずかしそうにこちらを見つめていた。
「さっきは助けてくれてありがとう」
「…別に。礼なんていい」
ぶっきらぼうに返すクロムとは対照的に少年は少し興奮したように言葉を続けた。
「あんなかっこいい膝カックン初めて見た!それにあんなに強そうな人に足を引っ掛けて転ばせるの凄かった!」
子どもらしい感想に「いや…そんなんじゃない」とクロムが困ったように頭を掻きながら答える。しかし次に少年の口から飛び出してきた言葉は衝撃的なものであった。
「本当に凄かった!強いんだね!お姉ちゃん!!」
キラキラとした眼差しを向けた少年は悪意のない顔でとんでもないことを言い出した。先程までの困った表情から一変しクロムの動きが止まった。
「……は?」
「ブッ!〜ッ!!」
その少年の言葉にロスは吹き出した後、腹を抱えて前のめりになって震えていた。笑いを堪えていたのだ。対してクロムは信じられないと言った表情をしている。
「?僕変な事言っちゃった?」
キョトンと首を傾げながら聞く少年の表情は眩しいほど純粋であった。その少年の反応が更にツボに入ったのかロスは爆笑し始めたのであった。
「どいつもこいつも…!いいか!俺は男だ!」
笑い転げているロスを睨みつけながらクロムは少年に自身の性別を大声で伝える。
「……えー!?」
それに加えて少年も少しの間の後に驚きの声を上げた。暗くなった公園内に笑い声と驚きの声が聞こえると言う妙なことが起こっていた。