Devil†Story
「お疲れ様2人共。ありがとうね」
刹那がにこやかに、でも真剣な目付きで言った。
「事情は把握したか?」
「勿論。君が麗弥のカラスに手紙を渡してくれたからね」
そう言ってさっき俺が書いた紙をヒラヒラと見せた。
「それで…さっき言ってた新しい情報って?」
「それなんだけど」
稀琉の問いかけにロスが先程あった出来事を簡単に説明する。簡単にとはいえ確実に麗弥が連れ去られた事、眼鏡の男と首に蜘蛛の刺青が入った女が関わっている事、繁華街方面に逃走した事等必要な情報を的確に伝えていた。
「…って感じだな」
「もしかして…その子どもって輝太って名前の子?8歳くらいの」
ロスが話終わると稀琉が聞き覚えのある名前を出してきた。話の途中、途中で何やら気にするような素ぶりを見せていたのはその事を早く確認したかったからだろう。
「そうだけど…。なんだ稀琉。知ってるのか?」
「やっぱり!知ってるよ。よくあの公園にいるんだよね。オレも麗弥と一緒に公園に行った時に会っててちょっと前から友達になった子なんだ!麗弥はあの公園によく行くからオレより仲良しなんだよね」
輝太と同じようなキラキラとした顔で語る稀琉は嬉しそうであった。
「そうなんだ。だからあんな必死になってたのか」
ポンと手の平を叩いたロスは納得したように呟いた。思い返せば輝太の助けを求める姿は何処か鬼気迫るものがあった。それは自分の大切な友達を守るための行動だったのだ。
「………それよりも今はあの馬鹿をどうするかって話だろ」
黙って話を聞いていたクロムだったが何故か不機嫌そうに会話の流れを両断した。
「そうだよね。ごめん、ごめん」
クロムの様子を見た稀琉は慌てて謝る。しかしロスは「なんか不機嫌じゃねー?」と臆する事なくクロムに問いかけていた。それに対して「なってねぇよ」と明らかに不機嫌そうに返していた。
「話しを戻すけど何か目的があるのは間違えないね。仮に今回の事が狩人の仕業だとしたらその場で麗弥を攻撃出来たはず。それをしなかったって事は"情報収集"が目的だった可能性が高いね」
流れるように話を切り替え、話し合いの本質に触れ仕切り直しをする刹那。流石はここのオーナーを務めているだけのことはある。
「その為にわざわざ殺人を犯して麗弥の事を誘き寄せてるのを考えるとその考えが妥当だろうな。麗弥のカラス捕まえて時間稼ぎしてるところを見てもな。まぁ、女の方は見付けやすそうだが……。問題は黒眼鏡だろ」
カラスやロスから聞いた話しを整理すれば眼鏡の方が吸血鬼なのはほぼ確定だろう。女の方も人間ではない可能性が高い。しかしより危険なのは人間相手とはいえ戦い慣れている麗弥に全く悟られる事なく背後をとって一撃で気絶させた吸血鬼の方だろう。俺ですら魔物相手は殆ど経験がない。麗弥を助け出すなら戦闘は避けられないだろう。
ったく…。マジ面倒な事になったな……。俺は小さく溜め息をついた。
「そうだよね。多分麗弥のカラスを閉じ込めてた死体を用意したのもその"人"だもんね。」
稀琉は相手が“人間”だと思っている。稀琉や麗弥は刹那と違い、悪魔等の魔界…地獄の住民については知らない。だからロスが悪魔なのも知らないで過ごしている。言わない理由は決まってる。面倒だから。説明すんのも話すのも面倒臭い。
刹那にはまだガキだった頃に出会ったから言っていた。…そもそもその時に"見られ"たのもあるが。もし言わなかったら今頃一々怪我のチェックが入ってそれこそ面倒なことになっていただろう。ここ(カフェ)に所属してるのは互いに利害が一致しているからだ。刹那は馬鹿じゃない。無駄な干渉をしてこないのも、ある程度の自由があるのも俺の目的を分かっているからだ。別にここに固執する必要はないのも。刹那もそれを分かってるから無理な馴れ合いを強制してこない。……まぁ、最近は慣れてきたのか今日みたいな事を言ってくることも増えたが。
「そうそう。蜘蛛の女はクロムが言う通り見付けやすいかもしれないし、そんなに強くないかもしれけど……。そっちの方は現に人を殺しちゃってるからねぇ……」
物思いに耽っていたが刹那のその言葉で現実世界に戻ってくる。刹那には携帯で黒眼鏡の正体を送っている。しかし稀琉に合わせて人間という体で話しをしている。
「そうだよねぇ…。でも今のところ明確な理由は分からないよね。なんで麗弥に声かけたんだろ?」
「さぁな……」
まぁ、あいつの場合……自ら面倒事に首突っ込んで罠にかかったっていうところだろうが。
「刹那。どうする?」
ロスが机に腰掛けながら言った。
「んー…。早めに捜索しないとまずいね。まだ命は取られてないと思うけどタイムリミットは3日以内だろうね。
机に肘をつけて、時計の方を見ながら刹那は答える。
「んじゃあ…。殺られる前に“回収”?」
「だね〜。大切な“こっち”の従業員失う訳にいかないし」
“こっち”とはブラックカフェの裏の仕事…“殺し”等を行っている従業員の事だ。表のはバイトとかで使っているから沢山居るらしい。こっちは“ランク”があり俺が知る所、殺しまで担当する“Sランク”なのは…俺が知る限り俺とロス、稀琉、麗弥くらいだ。それ以外の“Aランク”や“Bランク”、“Cランク”を含めると30人にも満たないだろう。
刹那がにこやかに、でも真剣な目付きで言った。
「事情は把握したか?」
「勿論。君が麗弥のカラスに手紙を渡してくれたからね」
そう言ってさっき俺が書いた紙をヒラヒラと見せた。
「それで…さっき言ってた新しい情報って?」
「それなんだけど」
稀琉の問いかけにロスが先程あった出来事を簡単に説明する。簡単にとはいえ確実に麗弥が連れ去られた事、眼鏡の男と首に蜘蛛の刺青が入った女が関わっている事、繁華街方面に逃走した事等必要な情報を的確に伝えていた。
「…って感じだな」
「もしかして…その子どもって輝太って名前の子?8歳くらいの」
ロスが話終わると稀琉が聞き覚えのある名前を出してきた。話の途中、途中で何やら気にするような素ぶりを見せていたのはその事を早く確認したかったからだろう。
「そうだけど…。なんだ稀琉。知ってるのか?」
「やっぱり!知ってるよ。よくあの公園にいるんだよね。オレも麗弥と一緒に公園に行った時に会っててちょっと前から友達になった子なんだ!麗弥はあの公園によく行くからオレより仲良しなんだよね」
輝太と同じようなキラキラとした顔で語る稀琉は嬉しそうであった。
「そうなんだ。だからあんな必死になってたのか」
ポンと手の平を叩いたロスは納得したように呟いた。思い返せば輝太の助けを求める姿は何処か鬼気迫るものがあった。それは自分の大切な友達を守るための行動だったのだ。
「………それよりも今はあの馬鹿をどうするかって話だろ」
黙って話を聞いていたクロムだったが何故か不機嫌そうに会話の流れを両断した。
「そうだよね。ごめん、ごめん」
クロムの様子を見た稀琉は慌てて謝る。しかしロスは「なんか不機嫌じゃねー?」と臆する事なくクロムに問いかけていた。それに対して「なってねぇよ」と明らかに不機嫌そうに返していた。
「話しを戻すけど何か目的があるのは間違えないね。仮に今回の事が狩人の仕業だとしたらその場で麗弥を攻撃出来たはず。それをしなかったって事は"情報収集"が目的だった可能性が高いね」
流れるように話を切り替え、話し合いの本質に触れ仕切り直しをする刹那。流石はここのオーナーを務めているだけのことはある。
「その為にわざわざ殺人を犯して麗弥の事を誘き寄せてるのを考えるとその考えが妥当だろうな。麗弥のカラス捕まえて時間稼ぎしてるところを見てもな。まぁ、女の方は見付けやすそうだが……。問題は黒眼鏡だろ」
カラスやロスから聞いた話しを整理すれば眼鏡の方が吸血鬼なのはほぼ確定だろう。女の方も人間ではない可能性が高い。しかしより危険なのは人間相手とはいえ戦い慣れている麗弥に全く悟られる事なく背後をとって一撃で気絶させた吸血鬼の方だろう。俺ですら魔物相手は殆ど経験がない。麗弥を助け出すなら戦闘は避けられないだろう。
ったく…。マジ面倒な事になったな……。俺は小さく溜め息をついた。
「そうだよね。多分麗弥のカラスを閉じ込めてた死体を用意したのもその"人"だもんね。」
稀琉は相手が“人間”だと思っている。稀琉や麗弥は刹那と違い、悪魔等の魔界…地獄の住民については知らない。だからロスが悪魔なのも知らないで過ごしている。言わない理由は決まってる。面倒だから。説明すんのも話すのも面倒臭い。
刹那にはまだガキだった頃に出会ったから言っていた。…そもそもその時に"見られ"たのもあるが。もし言わなかったら今頃一々怪我のチェックが入ってそれこそ面倒なことになっていただろう。ここ(カフェ)に所属してるのは互いに利害が一致しているからだ。刹那は馬鹿じゃない。無駄な干渉をしてこないのも、ある程度の自由があるのも俺の目的を分かっているからだ。別にここに固執する必要はないのも。刹那もそれを分かってるから無理な馴れ合いを強制してこない。……まぁ、最近は慣れてきたのか今日みたいな事を言ってくることも増えたが。
「そうそう。蜘蛛の女はクロムが言う通り見付けやすいかもしれないし、そんなに強くないかもしれけど……。そっちの方は現に人を殺しちゃってるからねぇ……」
物思いに耽っていたが刹那のその言葉で現実世界に戻ってくる。刹那には携帯で黒眼鏡の正体を送っている。しかし稀琉に合わせて人間という体で話しをしている。
「そうだよねぇ…。でも今のところ明確な理由は分からないよね。なんで麗弥に声かけたんだろ?」
「さぁな……」
まぁ、あいつの場合……自ら面倒事に首突っ込んで罠にかかったっていうところだろうが。
「刹那。どうする?」
ロスが机に腰掛けながら言った。
「んー…。早めに捜索しないとまずいね。まだ命は取られてないと思うけどタイムリミットは3日以内だろうね。
机に肘をつけて、時計の方を見ながら刹那は答える。
「んじゃあ…。殺られる前に“回収”?」
「だね〜。大切な“こっち”の従業員失う訳にいかないし」
“こっち”とはブラックカフェの裏の仕事…“殺し”等を行っている従業員の事だ。表のはバイトとかで使っているから沢山居るらしい。こっちは“ランク”があり俺が知る所、殺しまで担当する“Sランク”なのは…俺が知る限り俺とロス、稀琉、麗弥くらいだ。それ以外の“Aランク”や“Bランク”、“Cランク”を含めると30人にも満たないだろう。