Devil†Story
初めは逃げ出したカラスの一羽だと思ったがよく見るとそのカラスはクローであった。それに気付いたロスが殺気を引っ込めた。
「…ん?クローか?」
「……」
俺も姿勢はそのままにしつつ殺気を収め耳を澄ました。クローが話している言葉を聞くためだ。ガキの頃から何故か俺には主にカラスではあるが、鳥が言っている事が分かった。どっちかっていうと“感じる”と言った方がしっくりくるのだが。
「カー!」
初めは「こんなところでマジ喧嘩するな」と警告をしていた。…まさかわざわざそれだけを言いに来たのか?いや…そんなわけねぇな。クローはその辺のカラスよりも頭が良いし、俺に忠実で他の奴の言うことは殆ど聞かない位だ。基本的には俺がやることに口出すことはない。別の理由があってそのついでに忠告してきたというのが妥当だろう。暫く聞いているとその理由が分かった。
「!それは本当か?」
「カー!」
クローは俺の言葉に返事をし肩に止まった。剣の柄から手を離して姿勢を戻す。それを見たロスも楽な姿勢になった。
「一時休戦だ。状況が動いたぞ」
「OK〜。で?なんだって?」
いつも通りの雰囲気に戻ったロスがクローが言った言葉を聞いてくる。
「稀琉が聞き込みしてる時にその様子を見張ってた奴が居たってよ」
「なるほどな。やっぱりクローの方がそいつなんかよりも頼りになるじゃねぇか」
ロスは先程ポケットにしまった携帯を指差した。念の為、俺達と稀琉が動いている間の区間をクローに偵察させていたのだが正解だったようだ。
「携帯は偵察じゃなくて通信手段だっての。ていうか…クローが言うには人間じゃねぇらしいがお前何も感じないのか?」
俺が聞いたのと同時位だろうか。突然ロスがクローが来た方向を向いた。じっと目を細めて何かを察知している。ロスの紅黒い目が妖しく光っている。
「どうした?」
「みっけた。さっきは電波や俺自身の殺気で気付かなかったけどやっぱ人間じゃないのがいるな」
ロスはボソッと答えた。流石に俺にはある程度気配は分かっても相手が魔物なのかは判別がつかない。特に人が行き来しているこの場所では尚の事。クローの情報と稀琉が行くと言っていた場所から察するに人混みに紛れて様子を伺っている事は分かるが。
「どんな奴だ?」
「そうだな……あ」
突然素っ頓狂な声をあげたかと思えばその目の光が無くなった。
「なんだ?」
「あー…逃げた」
「逃げた?稀琉に気付かれたのか?」
俺の問いに罰の悪そうな顔をしたロスが頭を掻いた。
「いやー…多分さっき俺が"ちょっと"殺気出したから…バレちった」
「…は?」
ロスの言葉に今度は俺が声をあげる。そのままロスを見ると両手を合わせて「ごめーん」と謝っている。…やりやがったなこの野郎。
「てめぇふざけんなよ!何のためにこんなクソ強風の中、偵察してたんだよ!挙句に俺と言い合いしてて気付かねぇってどういう事だよ!」
「だからごめんって!でも何となくは分かったぞ!そんな強い魔物じゃねぇな。擬態能力が高い魔物だと思う。突然蜘蛛の子を散らしたように、気配が小さくなってそのまま紛れたから、麗弥をたぶらかした女か少なくても関係はある奴だな。女の首に蜘蛛のタトゥー入ってるって言ってたし」
「断定は出来ねぇのかよ。クローもバレねぇように遠目でしか見れてなくて姿は分からねぇらしいし…クソが」
悪態をつきながら俺はロスを睨みつける。それと同時にポケットからメモ帳とペンを出し、手早く紙にメモを書いた。
「なんだよ謝ってるだろ!つーか俺だけのせいじゃなくねぇ?お前が俺に喧嘩売らなきゃこんな事になってねぇだろうが!」
「あぁ?!先に突っかかってきたのはてめぇだろ!」
ロスが先程の事を掘り返してきた為、最後の方は字が雑になってしまったが読めなくはないだろう。クローを腕に移動させ、足にメモを入れたホルダーをつけながら言い返す。
「それはお前が文句ばっか言うからだろ!少しは愛想よく出来ねぇのかよ!」
「思った事を言って何が悪ぃんだよ!てめぇに言ってる訳じゃねぇんだから聞き流せばいいだろ!いちいち拾いやがって!」
ロスに文句を言った後に「これ稀琉に届けてきてくれ」と手短にクローに伝える。
「あぁ言えばこう言いやがって…!口ばっか達者だな!やっぱ一旦痛い目に遭わせねぇと分かんねぇのか?」
「上等だ!続きといこうじゃねぇか!どうせ奴等には逃げられたんだ。お前が間抜けなせいでな!」
「おーおー!そこまで痛い目に遭いてぇんならお望み通りにぼこってやるよ!コラ!」
「やってみろーー「カー!!!!!」
再び喧嘩をし始めた瞬間にクローが一際大きな声で鳴いた。腕から飛んだクローはロスの前で「カー!カー!!」と鳴いている。その後、俺の前でも
「カー」と鳴いてから瞬く間に飛んで行った。
「…え?何?」
突然のクロー行動にロスから殺気が消えキョトンとしている。
「………」
クローが言っていた事が分かる俺はフードを被り直して元居た場所に座る。
「ちょい待ち。クローはなんて言ってたんだ?俺に文句言ってたのは何となく分かるけど」
「………「喧嘩するなって言ってるだろ。いい加減にしろよ。お前等のガチ喧嘩は洒落になんないのに。また敵に逃げられたいのか」」
「へっ?」
「「特にロス。お前の気はちょっとじゃないんだからわきまえろ。魔物どころか街中にもその殺気が伝わって一部の勘のいい人間も身震いしてたぞ。自分が強者である自覚を待ってくれ」」
「………」
「「とにかく一旦稀琉にこの手紙を届けてくるから俺がいない間に喧嘩するなよ。いいか?くれぐれも喧嘩するなよ」……だと。喧嘩するなって2回も言って念押しして行ったぞ。……意味分かるよな?」
「……おぅ。やめようか」
クローの言葉を代弁して伝えるとスンと切り替え、俺と同じように元の位置に戻って行った。本当はもっときつい言葉で叱責していたがこれ以上喧嘩するのが馬鹿らしくなったのでオブラートに包んだ。クローは俺に似て口が悪い。俺にはそんな口をきかないが他人…特にロスに対してはかなり言う。
クローが飛んで行った街へ再び目を落とすと変わらず人が行き来している。しかし確かにその辺を飛んでいた野鳥は姿が見えなくなっていた。
ロスには言っていないが俺も「イライラしてるのは昨日から知ってるけど駄目だぞ。怒らないで。すぐ戻ってくるから」と諌められた。まさかのクローに喧嘩を仲裁されるという間抜けな状況にそれ以降は俺もロスも何も言わずクローが戻ってくるのを待つことになった。
「…ん?クローか?」
「……」
俺も姿勢はそのままにしつつ殺気を収め耳を澄ました。クローが話している言葉を聞くためだ。ガキの頃から何故か俺には主にカラスではあるが、鳥が言っている事が分かった。どっちかっていうと“感じる”と言った方がしっくりくるのだが。
「カー!」
初めは「こんなところでマジ喧嘩するな」と警告をしていた。…まさかわざわざそれだけを言いに来たのか?いや…そんなわけねぇな。クローはその辺のカラスよりも頭が良いし、俺に忠実で他の奴の言うことは殆ど聞かない位だ。基本的には俺がやることに口出すことはない。別の理由があってそのついでに忠告してきたというのが妥当だろう。暫く聞いているとその理由が分かった。
「!それは本当か?」
「カー!」
クローは俺の言葉に返事をし肩に止まった。剣の柄から手を離して姿勢を戻す。それを見たロスも楽な姿勢になった。
「一時休戦だ。状況が動いたぞ」
「OK〜。で?なんだって?」
いつも通りの雰囲気に戻ったロスがクローが言った言葉を聞いてくる。
「稀琉が聞き込みしてる時にその様子を見張ってた奴が居たってよ」
「なるほどな。やっぱりクローの方がそいつなんかよりも頼りになるじゃねぇか」
ロスは先程ポケットにしまった携帯を指差した。念の為、俺達と稀琉が動いている間の区間をクローに偵察させていたのだが正解だったようだ。
「携帯は偵察じゃなくて通信手段だっての。ていうか…クローが言うには人間じゃねぇらしいがお前何も感じないのか?」
俺が聞いたのと同時位だろうか。突然ロスがクローが来た方向を向いた。じっと目を細めて何かを察知している。ロスの紅黒い目が妖しく光っている。
「どうした?」
「みっけた。さっきは電波や俺自身の殺気で気付かなかったけどやっぱ人間じゃないのがいるな」
ロスはボソッと答えた。流石に俺にはある程度気配は分かっても相手が魔物なのかは判別がつかない。特に人が行き来しているこの場所では尚の事。クローの情報と稀琉が行くと言っていた場所から察するに人混みに紛れて様子を伺っている事は分かるが。
「どんな奴だ?」
「そうだな……あ」
突然素っ頓狂な声をあげたかと思えばその目の光が無くなった。
「なんだ?」
「あー…逃げた」
「逃げた?稀琉に気付かれたのか?」
俺の問いに罰の悪そうな顔をしたロスが頭を掻いた。
「いやー…多分さっき俺が"ちょっと"殺気出したから…バレちった」
「…は?」
ロスの言葉に今度は俺が声をあげる。そのままロスを見ると両手を合わせて「ごめーん」と謝っている。…やりやがったなこの野郎。
「てめぇふざけんなよ!何のためにこんなクソ強風の中、偵察してたんだよ!挙句に俺と言い合いしてて気付かねぇってどういう事だよ!」
「だからごめんって!でも何となくは分かったぞ!そんな強い魔物じゃねぇな。擬態能力が高い魔物だと思う。突然蜘蛛の子を散らしたように、気配が小さくなってそのまま紛れたから、麗弥をたぶらかした女か少なくても関係はある奴だな。女の首に蜘蛛のタトゥー入ってるって言ってたし」
「断定は出来ねぇのかよ。クローもバレねぇように遠目でしか見れてなくて姿は分からねぇらしいし…クソが」
悪態をつきながら俺はロスを睨みつける。それと同時にポケットからメモ帳とペンを出し、手早く紙にメモを書いた。
「なんだよ謝ってるだろ!つーか俺だけのせいじゃなくねぇ?お前が俺に喧嘩売らなきゃこんな事になってねぇだろうが!」
「あぁ?!先に突っかかってきたのはてめぇだろ!」
ロスが先程の事を掘り返してきた為、最後の方は字が雑になってしまったが読めなくはないだろう。クローを腕に移動させ、足にメモを入れたホルダーをつけながら言い返す。
「それはお前が文句ばっか言うからだろ!少しは愛想よく出来ねぇのかよ!」
「思った事を言って何が悪ぃんだよ!てめぇに言ってる訳じゃねぇんだから聞き流せばいいだろ!いちいち拾いやがって!」
ロスに文句を言った後に「これ稀琉に届けてきてくれ」と手短にクローに伝える。
「あぁ言えばこう言いやがって…!口ばっか達者だな!やっぱ一旦痛い目に遭わせねぇと分かんねぇのか?」
「上等だ!続きといこうじゃねぇか!どうせ奴等には逃げられたんだ。お前が間抜けなせいでな!」
「おーおー!そこまで痛い目に遭いてぇんならお望み通りにぼこってやるよ!コラ!」
「やってみろーー「カー!!!!!」
再び喧嘩をし始めた瞬間にクローが一際大きな声で鳴いた。腕から飛んだクローはロスの前で「カー!カー!!」と鳴いている。その後、俺の前でも
「カー」と鳴いてから瞬く間に飛んで行った。
「…え?何?」
突然のクロー行動にロスから殺気が消えキョトンとしている。
「………」
クローが言っていた事が分かる俺はフードを被り直して元居た場所に座る。
「ちょい待ち。クローはなんて言ってたんだ?俺に文句言ってたのは何となく分かるけど」
「………「喧嘩するなって言ってるだろ。いい加減にしろよ。お前等のガチ喧嘩は洒落になんないのに。また敵に逃げられたいのか」」
「へっ?」
「「特にロス。お前の気はちょっとじゃないんだからわきまえろ。魔物どころか街中にもその殺気が伝わって一部の勘のいい人間も身震いしてたぞ。自分が強者である自覚を待ってくれ」」
「………」
「「とにかく一旦稀琉にこの手紙を届けてくるから俺がいない間に喧嘩するなよ。いいか?くれぐれも喧嘩するなよ」……だと。喧嘩するなって2回も言って念押しして行ったぞ。……意味分かるよな?」
「……おぅ。やめようか」
クローの言葉を代弁して伝えるとスンと切り替え、俺と同じように元の位置に戻って行った。本当はもっときつい言葉で叱責していたがこれ以上喧嘩するのが馬鹿らしくなったのでオブラートに包んだ。クローは俺に似て口が悪い。俺にはそんな口をきかないが他人…特にロスに対してはかなり言う。
クローが飛んで行った街へ再び目を落とすと変わらず人が行き来している。しかし確かにその辺を飛んでいた野鳥は姿が見えなくなっていた。
ロスには言っていないが俺も「イライラしてるのは昨日から知ってるけど駄目だぞ。怒らないで。すぐ戻ってくるから」と諌められた。まさかのクローに喧嘩を仲裁されるという間抜けな状況にそれ以降は俺もロスも何も言わずクローが戻ってくるのを待つことになった。