Devil†Story
プルルル…プルルル…ガチャ


「あっもしもしクロム?電話ごめんね」


「いや構わない。クローから聞いたがお前のカラス動けなくなったって?」


「そうなんだよね。なんか1時間位前かな?なんか一瞬空気がピリついた感じがしたんだけど…その時からパニックになっちゃって。近くの木に待機させてたんだけど落ちる位の凄いパニックでビックリしちゃった。今はそこまでじゃないけど口が開いたままで動かそうとすると凄く嫌がっちゃうからどうしたらいいかなって相談したくて」


「地震でも来るのかなぁ?確かにあの空気はオレも寒気したんだけどね」と呟いた。


普通の人間ならともかくやはり稀琉も裏の従業員である為、ロスの殺気に気付いた様子だった。動物はロスが悪魔なのに気付いている。稀琉のカラスも例外ではなく初めから気付いていた。先程の殺気がロスのものである事は感じ取っているのだろう。ロスの側には恐怖で近寄りたくなくて動かない事が予想された。俺は溜め息をついてから稀琉に話しかける。


「それは俺も感じたな。可能なら稀琉のカラスの側に携帯を近づけてくれるか?お前のカラスに話してみるからカラスが2回鳴くまでは時間がかかってても黙ってろよ」


"俺も感じた"などと嘘を交えながら稀琉に要件を伝えた。


「本当?ありがとう!よろしくね」


スッと受話器の先から風を切る音がし、稀琉のカラスの呼吸音が聞こえてきた。その中に小さな呟きが聞こえてきたので俺は耳を澄ませる。


「………」


電話越しだと感じ取りにくいので集中してカラスの声を聞いた。やはり恐怖で動けなくなっているようでしきりに「嫌だ。怖い。帰ったらあの人がいる。動けない」と怖がっている様子が伺えた。…本当に余計な事しやがって。遥か先まで避難しているロスを睨みつけつつ俺は出来るだけゆっくり稀琉のカラスに語りかけた。


「聞こえてるか?きつかったよな。お前が動けなくなる理由は分かる。だがもう大丈夫だから稀琉と一緒に戻ってこい。無理して飛ばなくていいから稀琉に抱えてもらえ。お前の飼い主は嫌がらずに抱えてくれるだろ。…怖い目に遭わせて悪かったな」


ー………ー


しばしの沈黙が続く。その内「カー」と一声鳴いた。


ー…本当?もう大丈夫?ー


「大丈夫だ。お前は大丈夫そうか?」


ー……うん。分かってくれてありがとうー


「礼なんかいい。お前の飼い主には2回鳴いたら受話器を戻せって言ったから大丈夫ならもう一度鳴いてやってくれ」


俺の言葉に稀琉のカラスは再度鳴いた。再び風を切る音がし、稀琉が電話口に出た。


「もしもし?えっと2回鳴いたから戻したんだけど大丈夫?」


「あぁ。もう抵抗しないと思うから抱えて連れて帰ってこい」


「分かった!ほらおいで。…わぁ。本当だ!素直にオレの手に乗ってくれた!やっぱり凄いなー!ありがとうね」


きっと片手で優しく抱き抱えているだろう稀琉が電話口で俺に笑顔を向けているのは想像に容易かった。


「別に礼なんかいらない。動けるようになったならそれで。それよりも聞き込み中に何か変わったことはあったか?」


恐らく気付いていると思うが俺は試すように稀琉に問い掛ける。


「実は…その変な空気感になる少し前に気配を感じてたんだよね。多分オレを監視してたのかな?でも途中で気配が消えたんだ。今は見られてる感じしないよ」



稀琉は自分がつけられていることにきちんと気付いていた様だ。カフェでは気を抜いている事が多いので昨日みたいにボケっとしている稀琉だが、普段命のやり取りをしているのである程度はそういった気配を察知する事は可能である。


「気付いていたのなら良い。後は戻ったら聞く。帰りも気を張っとけよ」


「分かった!ありがとうね。また後で!」


「あぁ」


ブチッ…


電話を切って再び電源を落とした。


「お、終わったか!?」


数m離れた場所でロスが情けない声を出した。


「終わった」


「あー、しんどかった。んじゃ…行くか?」


先程の殺気を出していたと思えない程、いつも雰囲気に戻ったロスは少し高い屋根の上にスッと跳んで登った。


「……あぁ。さっさと情報整理をしよう」


俺も屋上のフェンスから身を乗り出して少し低いビルの上に飛び降りた。後ろからクローが着いてくるのを確認し最短ルートでカフェへと戻った。
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