Devil†Story
「おかえり。午前中からお疲れ様」


「ただいま〜」


談話室に戻ると刹那がいつも通り椅子に座って俺等を出迎えた。ロスは呑気に挨拶を返した。流石に稀琉はまだ戻ってきていないようだ。早く話を聞いて情報整理をしたいところだが、こちらの報告をするにはかえって都合が良い。いつ戻ってくるか分からないので手短に要件を話す。


「本当だぜ。稀琉が戻ってくる前に単刀直入に言うがやっぱ人間じゃねぇのがいるっぽいぞ。ただ麗弥を拉致った女かは分からない状況だ。可能性としてその女じゃないかって事だ」


「…え?分からなかった?」


俺の言葉に刹那は不思議そうな顔をした。俺は黙って頷く。刹那はロスの方を見ると口笛を吹いて斜め上を見ていた。それを見た刹那が何かを言おうとしして口を開こうとしたが何かを察したらしい。顔の前で手を組んで怪訝そうな顔をした。


「……まさかサボってた?」


「…は?」


「〜♪」


非常に心外な発言に俺は眉間にしわを寄せる。ロスは変わらず口笛を吹いている状況に刹那は言い返してくる。


「やっぱり!あのねぇ!君達の"目的"外の事をさせてるのはこっちも分かってるし申し訳ないと思うけど、人外の敵が出てきている以上協力してよ!あんなにお願いしたのにサボるなんて!も〜!」


好き勝手言ってやがる刹那に対して俺はイライラしながら返す。


「ちげぇよ!確かに面倒だが腹括ってお前から言われたビルの屋上に偵察してたぞ!」


「だったらなんで逃げられちゃったんだよ!君達…特にロスなら麗弥の居場所まで分からなくとも敵を断定する事くらい朝飯前でしょ?」


刹那が言葉を発すれば発する程俺はイライラが抑えきれず貧乏揺りをする。いまだ口笛を吹いて我関せずと言ったロスに対しても同様に怒りが湧いてくる。


「こいつが俺に突っかかってきて喧嘩になりかけたんだよ!その時にこいつの殺気がダダ漏れて逃げられたんだ!」


俺の言葉にロスが口笛を吹くのをやめて「ハァ!?」と漸く反応し始める。


「喧嘩?……待って?まさかガチ喧嘩じゃないよね?」


「それなりに」


「ちょっと!君達のガチ喧嘩なんて洒落にならないのに何考えてるの!そんなの相手に逃げられるに決まってるでしょ!」


頭を抱えた刹那は俺に文句を言ってくる。イライラが増して段々と貧乏揺りが激しくなっていく。


「うるせぇな!んなこと分かってるっての!こいつが間抜けなせいで逃げられたってな!だが昨日からこいつ俺に突っかかってきてウザかったんだ!文句ならこいつに言え!」


親指でロスの事を指す。それがきっかけとなりロスも俺に言い返し始めた。


「ハァ!?言わせておけば…!さっきも言ったが俺だけのせいじゃねぇだろ!?」


「俺だってさっき言っただろ!それなのにお前が突っかかって来るのが悪ぃんだ!」


「昨日からって言うけど全部事実だろ!女顔なのも根暗なのも俺より弱い事も!」


「あぁ!?何しれっと言ってねぇ事を付け足してんだよ!ふざけんな!それならお前が間抜けで逃げられた事も事実なんだから責任とれよ!」


「ハァ!?誰が間抜けだっての!!」


「聞こえなかったか?てめぇだよ!てめぇ!!」


「ちょっとちょっと!!ストップ!ストーップ!!」


段々ヒートアップしてきた言い合いに刹那が間に入るが聞こえていない様だ。2人は先程と同じような流れで詰め寄り始めた。


「このガキ…!やっぱ一旦半殺しにしてやろうか!?」


「やってみろって言ってんだろ!てめぇの喉掻っ切ってやる!」


再度互いから殺気が出そうになった時だった。


「カァー!!!!!!」


「「!!」」


今まで大人しくクロムの肩に止まっていたクローが今日一大きな声で鳴いた。2人はその経験に身に覚えがあったのでスッと喧嘩をやめて刹那の方に向き直った。あまりの切り替えように刹那も驚く。


「カーカー?」


「……あぁ。そうだな。お前の言う通りだ」


「カーカァカー?」


「……悪かった」


クロムとクローは2人にしか分からない話しをしていた。きっと諭されたのだろう。クロムは素直にクローに謝っていた。それを見て刹那を安堵したようにホッと胸を撫で下ろした。


「…なるほどね。どんな状況だったか分かったよ。で?2人の様子から察するにその時もクローに仲裁されたって事かな?」


「「………」」


俺もロスも何も言わずにただ立っていた。それを見た刹那は盛大な溜め息をついて「…クローに仲裁されるって君達はいくつだい?話聞いてる限りどっちもどっちだから喧嘩両成敗って事でこれで終わりにしてよ。確かに昨日から喧嘩し過ぎだよ」とまるで小学生相手に喧嘩の仲裁を行う教師みたいな事を言われた。腹が立ったが俺の肩の上でクローが刹那の言葉に頷いているのを見て怒りを抑える。今日だけで3回もクローに喧嘩(それもガチな)を仲裁されてるのは事実だったので黙っていた。


「まぁ過ぎた事を言っても仕方ない。稀琉が情報を掴んでるかもしれないしね」


「………」


「…あーそういえば。逃げた方向なら掴んだぞ」


ロスが思い出したかのように呟いた。


「本当かい?」


「あぁ。さっきの場所からだと北東だから…ここからだと北北西ってとこかな」


「そっちは…あぁ。工業地帯の方か。確かにあそこなら拉致監禁しやすい場所だね。麗弥がそこに居る可能性高いね」


この辺りの地形は全て頭に入っているのだろう。「あの廃工場跡か…それとも倉庫が並ぶエリアか…」と独り言を呟いていた。机の中から地図を取り出した時だった。


コンコンッ


「はーい」


ノック音が聞こえて刹那が返事をすると扉が開かれ、稀琉が中に入ってきた。
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