Devil†Story
「あらー。俺らが知らない間にそんな事になってたのか。ちゃんと手加減したの〜?血ぃついてるけど」


「そうなんだよ〜。手加減というかオレそんなに痛めつけたりしてないよー!ただ……怖い事を言ってくるからこれで少し怖がらせただーけ!」


変わらない笑顔で指輪に重り部分をつけて少しだけワイヤーを出した。…いや結構血がついてるんだが。相手を悪人と決めた稀琉は本当に容赦がない。これは手足が飛んでなくともそれなりに刻んで来やがったな。普段はちゃらんぽらんだが任務になると二重人格を疑う位、雰囲気変わる。


「…口封じしてきたんだろうな」


「したよー!ちゃんと約束したもん。絶対オレの事は誰にも言わないって!あの人達はあの近くのヤクザ事務所の傘下の人達だったから分かってくれたよ?…顔覚えてるし写真撮ったからねって言ったらすぐね」


「フフフ」と笑う稀琉の笑顔とは裏腹に言葉に含まれている黒さが隠しきれていなかった。この様子ならかなり凄んできただろうから大丈夫そうだな。


「とりあえずオレの報告はこんな感じかな?2人はどうだった?」


「あ?」


「偵察しててくれたんだよね?どうだった?怪しい人とか居た?」


「「……」」


突然の振りに俺とロスは無言を貫く。色々と情報を得た稀琉とは違って俺達はただ喧嘩していただけだ。なんなら間抜けにも逃げられた。刹那も窓の外を見て目を合わせないようにしている。


「あれ?おーい。2人ともどうしたの?」


そんな変な空気を感じ取ったのか稀琉は首を傾げながら聞いてきた。


「いや〜…稀琉が言ってたけど工業地帯に行ったかなぁ位しか分からなかったんだよねー」


漸くロスが反応し、稀琉に言える範囲の情報を述べた。


「そうなの?えー珍しいね。2人が見逃すなんて」


「あはは…ほら?変な寒気した時あったじゃん?俺らもそれで気が散っちゃってさ〜」


「確かにアレはビックリしたけど…2人なら平気そうなのに。でもそういう時もあるよね」


「あはは…はは」


困ったように笑って答えるロスに稀琉は煽るような言葉を並べた。…こいつ。天然で煽ってくるとこあるよな。本人は全く自覚がないからタチが悪い。
それよりもロス…寒気がした時とかほざきやがって。原因を作った本人の癖に息を吐くように嘘をついてやがるな。…この腹黒悪魔が。


「と、とにかく!みんなの情報から怪しいのは工場エリアなのは分かったから明日はそこを中心に調査してきてくれる?」


変な空気を壊すように刹那は口を開いて卓上に広げた地図にペンで丸をつけた。刹那が丸をつけたところは特に廃墟が多いエリアだった。そこに明日行ってこいという事だ。それに対してロスが「あー…」と口を開いた。


「悪い。明日はちょっと私用で出掛けなきゃならないんだわ」


「ハァ?明日じゃなきゃ駄目なのか?」


面倒事が増えるのが嫌でロスに聞く。大体こいつのせいで今日で終わったはずの迷子探しが続行になってんじゃねぇかよ。しかし俺の考えとは違ってロスは首を横に振った。


「ちょーっとな。俺だって面倒だから行きたくねぇんだよ」


大きな溜息をついている。本当に行きたくない時の反応だ。なら予定を動かすのは無理か…。なんで俺が2日も掛けてこんな仕事しなきゃなんねぇんだよ。


「そっか。なら仕方ないからオレとクロムの2人で行くしかないね」


「悪いな〜。頼んだよ」


「……仕方ない。さっさと終わらせるぞ」


本当は行きたくないのだが口に出すと面倒な事になりそうなので代わりに溜め息をつく。「俺は疲れたから昼寝する」そう言って自室に戻ろうとした俺の背中に稀琉と刹那が話し掛けてくる。


「明日よろしくねっ!」


「頼んだよ」


その声に俺は手だけ上げて部屋を出た。


「えっはやっ!待てよクロム!じゃあまたな2人とも!」


流れるように部屋を出て行こうとする俺にロスが慌てて走り出して言った。2人はにっこりと笑いながらロスを見送った。


カツン、コツン……


俺は静かな廊下を歩く。廊下には俺の足音しか響いていなかった…が、すぐに後ろから誰かが駆けてくる足音が響いた。


「クロム!待てって」


「……」


俺は黙ったまま後ろを振り返った。呆れた表情を浮かべている。


「お前さぁ…置いてくなよ」


大きな溜め息をついて文句を言ってくる。


「…なんでお前と四六時中一緒に居なきゃなんねぇんだよ」


「それは俺がお前の“主”だから♪」


「…あっそ」


流石に何度も喧嘩するつもりはないが、くだらない事を言って楽しそうにしているロスを他所に俺はまた歩き出した。


「あっ!テメッ!聞いてねぇだろ!?」


「聞いてた、聞いてた」


「………」


適当に答えていた俺だったがロスが急に黙った事に違和感を覚える。


「カー!!!」


「!」


後ろを振り返ろうとした瞬間肩に止まっていたクローが警告の声をあげた。
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