Devil†Story
それと同時に風が切る音がし、瞬時に俺は剣を取って反応する。その刹那、金属音が廊下に響き渡った。当然だ。ロスが俺の首目掛けて手刀しており、それを間一髪で剣で受け止めたのだから。バサバサと肩からクローが飛び立つ音が聞こえる。それ以外は時が止まっているのではないかと錯覚する程、動きがなかった。
「……!」
「………」
キリキリと金属が擦れ合う様な音がしている。かなりの力だ。受け止めてなければそれなりに出血していただろう。…馬鹿力が。ていうかこいつの腕どうなってんだよ。こっちは剣で受け止めてるんだぞ。
無表情で俺を見るロスを睨みつけて「…いきなりなんだよ」と問いかける。
「…へぇ。クローが警告したとはいえ一応反応出来たんだ?」
「…なめんなよ。どういうつもりだ?」
「誰かさんが調子こいてたからお灸を据えてやろうと思っただけだ。……お前こそ相手を見て喧嘩売れよな」
「…ッ!」
段々と押し負け始めた。抵抗するも片方の手が俺の首を捉え、力が込められ始めた。
「強くなったのは認めるよ。あの時よりもな。だが…俺の力量を鑑みたらどうなのかは考えろよ。……調子に乗んな」
殺気こそ出していないがそれなりに本気なのだろう。喉が潰れるのではないかと言うほど締め付けてきたロスは少し目を見開いて忠告してきた。
「…ッ…!てめぇこそ……見下してんじゃねぇよ…!」
声が出しづらい状況であったが俺は言い返し、剣から手を離した。
「!」
突然押し返す力がなくなった事で少しバランスを崩す。首を絞めていた手の力が緩んだのを感じ、その手を素早く振り払い、横腹に蹴りを入れた。
「…!」
「ッ…ゲホッ…」
後ろによろけたロスから距離を取る。喉を抑えて俺は咳き込みつつ呼吸を整えた。
「……ふーん。この位はなんとか出来るようになったんだ」
最初こそ腹を押さえていたロスだったがやはり大したダメージにはなってないようで涼しい顔をして不敵に笑った。
「…当たり前だろ。急に襲ってきやがって」
少し声帯を傷付けられたようだ。変わらず声が出しづらい。睨み合う俺達にクローが鳴いて警告し続ける。
「ハイハイ。もう終わりにしますよ〜」
クローに対しておどけるように言ったロスは指を鳴らした。見えないがその場の空気が動き出したのを感じる。どうやら時を止まったと感じたのは間違えじゃなかった様だ。そうじゃなければ今頃稀琉と刹那が飛び出して来ただろう。気付くと首の圧迫感も消えていた。
「…わざわざこんな(時を止める)事してまで俺に分からせてこようなんてご苦労な事だな」
「ククッ…まぁね。必要だろ?時に分からせるのもさ。飼い犬になめられた飼い主は終わりだからな」
「………」
首の圧迫感は消えている筈なのだが思わず首を押さえる。余裕ありげな顔をしたロスを俺は睨みつけた。
ーーキィィン
「!」
ロスが付けていたピアスが黒く輝き出した。それに対してロスは「チッ。んだよ。取り込み中だっての」と面倒そうにピアスに触れた。
「…何?今取り込み中なんだけど」
ー………!……ー
「ハァ?今から?行くのは明日だったろ?!面倒くせぇし、やなんだけど」
ー……!……!!ー
「え?いや知らねぇよ!そっちの都合じゃん」
ー……………ー
「…分かった!分かったよ!行けばいいんだろ!」
ー……!……!ー
「あーあーあー!分かったって言ってんだろ!うるせぇな!」
ー………………ー
「ハイハイ!じゃあな!」
ピアスから輝きが消えるのと同時にロスは溜め息をついた。誰かと通話していたようだ。よく聞こえなかったがピアス越しに誰かが話していたのは分かった。
「なんだ?」
俺の問い掛けに「あー…」と嫌そうな顔をしていた。通話をきっかけに普段のロスに戻った様だ。それを感じ取ったクローは再び俺の肩に止まった。
「いや〜。明日いつもの魔界に行く日だったんだけどさ。クソジジィ…魔王からで頼みたい事があるから今から来いって言われてさ。嫌だって言ってんのにあのクソジジィ…こっちの都合はお構いなしだ」
面倒臭そうにロスは答えた。ロスは定期的に1人で出掛ける事があった。それは魔界で魔王と謁見するという物だった。普通の悪魔ならこんな態度取らないだろうが、どう言うわけかいつもこんなタメ口で砕けた感じで話をしている。仮にも魔王相手なのに物怖じするどころかクソジジィ呼ばわりしている。上下関係が厳格そうな魔族に所属しているのにも関わらず何故ロスがそれを許されているかは定かではない。しかし、先程の雰囲気や力の強さを見るにただの悪魔ではないのだろう。
「あーあー面倒くせぇ。どうせあのガキのお守りだよ。なんで俺がお守りなんかしなきゃなんねぇんだよ」
「………」
頭を掻いて心底面倒そうにしているロスを眺める。…そういう割には俺の面倒はウゼェ位見てるのにな。俺みたいな人間のガキなんかより魔王の後継ぎを見る方が楽だろうに。クロムは数年前の事を思い返す。
数年前にある事件がきっかけで、2人は出会い契約を交わした。その頃のクロムはまだ普通の小学生の低学年と同じ年齢であった。もちろんそれまでは殺しどころか誰かに大きな危害を加えた事もなかった。だから慣れるまでにそれなりに時間が掛かったし、上手く立ち回れない事も多かった。そこに関してはさっきの喧嘩でも言ってた通りかなり厳しく鍛えられた。上手くいかない事が多いと半殺しにしてでも叩き込まれてきた。それでもロスはイライラしつつも、なんだかんだ丁寧に付き合ってくれていたと思う。だからこそ不思議だった。そんな自分よりも恐らく楽であろう魔王の後継ぎに対して面倒だと言っているのが。
「という訳で…悪いけど今から行ってくるわ」
窓を開けてこちらを見たロスは相変わらず何を考えているのか読めない瞳を向けた。…まぁ、こいつが何考えているのか分からねえのは昔からだよな。俺はそれ以上考えるのをやめて「分かった」とだけ言った。
「あー、もし俺が居ない間に吸血鬼とかと戦闘になったら無理すんなよ。一応"あれ"は渡してるけどさ。魔族相手に戦う経験が今までなかったからさ。人間なんかよりも狡猾で読めない動きが多いからな。戻ったら俺がなんとかするからよ」
俺は眉を動かした。情けをかけられたようで癪に触ったからだ。鼻で笑いながら言い返す。
「…ハッ。魔族だからなんだ。誰が相手でもぶっ殺してやるよ。…まぁ、お前の忠告は一応頭ん中に入れといてやるよ。お前の手なんか借りなくとも平気だがな」
ここでこいつの忠告を蔑ろにすればまたキレるかもしれない。そう思った俺は忠告は聞いたと言葉にして伝えた。ロスは変な顔をしていたが、やがて口元に手を当てて笑い始めた。
「アハハッ!お前やっぱり面白い奴だな!」
「…なんだよ。また馬鹿にしてんのか」
「いや違う違う〜!今まで色んな奴と契約したけど、初めて魔物と戦うかもしれないのにビビんなかったのはお前を含めて2人しか居なかったからスゲェなって思っただけ!」
「………」
昨日の様に馬鹿にした時等は笑う事が多いが、普段はあまりこんな感じで笑わない。そんなロスがいつもとは違って本当に楽しそうに笑っているのを俺は不思議な気持ちで見ていた。
「まぁ無理は禁物だぞ!じゃあ明日頑張れよ〜!」
そのまま楽しそうな顔をしたロスは窓から身を翻し飛び立って行った。ふわりとロスの羽根が目の前に落ちて来たので反射的に掴み取った。
「………悪魔の癖にあんな顔で笑うなんて…あいつの方が変な悪魔(やつ)だな」
黒いがカラスの羽根とは違う…それだけでも魔力を帯びているであろう羽根を見ながら俺は呟き、昼寝をする為に自室へ戻った。
「……!」
「………」
キリキリと金属が擦れ合う様な音がしている。かなりの力だ。受け止めてなければそれなりに出血していただろう。…馬鹿力が。ていうかこいつの腕どうなってんだよ。こっちは剣で受け止めてるんだぞ。
無表情で俺を見るロスを睨みつけて「…いきなりなんだよ」と問いかける。
「…へぇ。クローが警告したとはいえ一応反応出来たんだ?」
「…なめんなよ。どういうつもりだ?」
「誰かさんが調子こいてたからお灸を据えてやろうと思っただけだ。……お前こそ相手を見て喧嘩売れよな」
「…ッ!」
段々と押し負け始めた。抵抗するも片方の手が俺の首を捉え、力が込められ始めた。
「強くなったのは認めるよ。あの時よりもな。だが…俺の力量を鑑みたらどうなのかは考えろよ。……調子に乗んな」
殺気こそ出していないがそれなりに本気なのだろう。喉が潰れるのではないかと言うほど締め付けてきたロスは少し目を見開いて忠告してきた。
「…ッ…!てめぇこそ……見下してんじゃねぇよ…!」
声が出しづらい状況であったが俺は言い返し、剣から手を離した。
「!」
突然押し返す力がなくなった事で少しバランスを崩す。首を絞めていた手の力が緩んだのを感じ、その手を素早く振り払い、横腹に蹴りを入れた。
「…!」
「ッ…ゲホッ…」
後ろによろけたロスから距離を取る。喉を抑えて俺は咳き込みつつ呼吸を整えた。
「……ふーん。この位はなんとか出来るようになったんだ」
最初こそ腹を押さえていたロスだったがやはり大したダメージにはなってないようで涼しい顔をして不敵に笑った。
「…当たり前だろ。急に襲ってきやがって」
少し声帯を傷付けられたようだ。変わらず声が出しづらい。睨み合う俺達にクローが鳴いて警告し続ける。
「ハイハイ。もう終わりにしますよ〜」
クローに対しておどけるように言ったロスは指を鳴らした。見えないがその場の空気が動き出したのを感じる。どうやら時を止まったと感じたのは間違えじゃなかった様だ。そうじゃなければ今頃稀琉と刹那が飛び出して来ただろう。気付くと首の圧迫感も消えていた。
「…わざわざこんな(時を止める)事してまで俺に分からせてこようなんてご苦労な事だな」
「ククッ…まぁね。必要だろ?時に分からせるのもさ。飼い犬になめられた飼い主は終わりだからな」
「………」
首の圧迫感は消えている筈なのだが思わず首を押さえる。余裕ありげな顔をしたロスを俺は睨みつけた。
ーーキィィン
「!」
ロスが付けていたピアスが黒く輝き出した。それに対してロスは「チッ。んだよ。取り込み中だっての」と面倒そうにピアスに触れた。
「…何?今取り込み中なんだけど」
ー………!……ー
「ハァ?今から?行くのは明日だったろ?!面倒くせぇし、やなんだけど」
ー……!……!!ー
「え?いや知らねぇよ!そっちの都合じゃん」
ー……………ー
「…分かった!分かったよ!行けばいいんだろ!」
ー……!……!ー
「あーあーあー!分かったって言ってんだろ!うるせぇな!」
ー………………ー
「ハイハイ!じゃあな!」
ピアスから輝きが消えるのと同時にロスは溜め息をついた。誰かと通話していたようだ。よく聞こえなかったがピアス越しに誰かが話していたのは分かった。
「なんだ?」
俺の問い掛けに「あー…」と嫌そうな顔をしていた。通話をきっかけに普段のロスに戻った様だ。それを感じ取ったクローは再び俺の肩に止まった。
「いや〜。明日いつもの魔界に行く日だったんだけどさ。クソジジィ…魔王からで頼みたい事があるから今から来いって言われてさ。嫌だって言ってんのにあのクソジジィ…こっちの都合はお構いなしだ」
面倒臭そうにロスは答えた。ロスは定期的に1人で出掛ける事があった。それは魔界で魔王と謁見するという物だった。普通の悪魔ならこんな態度取らないだろうが、どう言うわけかいつもこんなタメ口で砕けた感じで話をしている。仮にも魔王相手なのに物怖じするどころかクソジジィ呼ばわりしている。上下関係が厳格そうな魔族に所属しているのにも関わらず何故ロスがそれを許されているかは定かではない。しかし、先程の雰囲気や力の強さを見るにただの悪魔ではないのだろう。
「あーあー面倒くせぇ。どうせあのガキのお守りだよ。なんで俺がお守りなんかしなきゃなんねぇんだよ」
「………」
頭を掻いて心底面倒そうにしているロスを眺める。…そういう割には俺の面倒はウゼェ位見てるのにな。俺みたいな人間のガキなんかより魔王の後継ぎを見る方が楽だろうに。クロムは数年前の事を思い返す。
数年前にある事件がきっかけで、2人は出会い契約を交わした。その頃のクロムはまだ普通の小学生の低学年と同じ年齢であった。もちろんそれまでは殺しどころか誰かに大きな危害を加えた事もなかった。だから慣れるまでにそれなりに時間が掛かったし、上手く立ち回れない事も多かった。そこに関してはさっきの喧嘩でも言ってた通りかなり厳しく鍛えられた。上手くいかない事が多いと半殺しにしてでも叩き込まれてきた。それでもロスはイライラしつつも、なんだかんだ丁寧に付き合ってくれていたと思う。だからこそ不思議だった。そんな自分よりも恐らく楽であろう魔王の後継ぎに対して面倒だと言っているのが。
「という訳で…悪いけど今から行ってくるわ」
窓を開けてこちらを見たロスは相変わらず何を考えているのか読めない瞳を向けた。…まぁ、こいつが何考えているのか分からねえのは昔からだよな。俺はそれ以上考えるのをやめて「分かった」とだけ言った。
「あー、もし俺が居ない間に吸血鬼とかと戦闘になったら無理すんなよ。一応"あれ"は渡してるけどさ。魔族相手に戦う経験が今までなかったからさ。人間なんかよりも狡猾で読めない動きが多いからな。戻ったら俺がなんとかするからよ」
俺は眉を動かした。情けをかけられたようで癪に触ったからだ。鼻で笑いながら言い返す。
「…ハッ。魔族だからなんだ。誰が相手でもぶっ殺してやるよ。…まぁ、お前の忠告は一応頭ん中に入れといてやるよ。お前の手なんか借りなくとも平気だがな」
ここでこいつの忠告を蔑ろにすればまたキレるかもしれない。そう思った俺は忠告は聞いたと言葉にして伝えた。ロスは変な顔をしていたが、やがて口元に手を当てて笑い始めた。
「アハハッ!お前やっぱり面白い奴だな!」
「…なんだよ。また馬鹿にしてんのか」
「いや違う違う〜!今まで色んな奴と契約したけど、初めて魔物と戦うかもしれないのにビビんなかったのはお前を含めて2人しか居なかったからスゲェなって思っただけ!」
「………」
昨日の様に馬鹿にした時等は笑う事が多いが、普段はあまりこんな感じで笑わない。そんなロスがいつもとは違って本当に楽しそうに笑っているのを俺は不思議な気持ちで見ていた。
「まぁ無理は禁物だぞ!じゃあ明日頑張れよ〜!」
そのまま楽しそうな顔をしたロスは窓から身を翻し飛び立って行った。ふわりとロスの羽根が目の前に落ちて来たので反射的に掴み取った。
「………悪魔の癖にあんな顔で笑うなんて…あいつの方が変な悪魔(やつ)だな」
黒いがカラスの羽根とは違う…それだけでも魔力を帯びているであろう羽根を見ながら俺は呟き、昼寝をする為に自室へ戻った。