Devil†Story
「それは多分大丈夫じゃないかな?」


「でも…確信がある訳じゃないでしょ?」


「まあ そうなんだけど…」


少し重たい空気が漂った。…ちっ。うざってぇな。メソメソしてんじゃねぇよ。よく他人の為にそこまで思い入れ出来るな。俺は溜め息をついてから口を開く。


「…仮に」


「え?」


「仮に俺なら最初の餌撒いて来なかったら新たな餌を撒くけどな。そうだな…例えばあの馬鹿を殺してカフェの前にぶん投げて来るとか。ここを潰す気でいるなら、そっちの方が手っ取り早いからな」


「そもそも俺は餌を撒くとか面倒な事はしねぇけど」と付け加える。俺の話を聞いた刹那が反応する。


「あぁ!それだそれ!麗弥はまだ生きてるって何処かで確信してたんだけど…それが何故か俺も引っかかってたんだ。あっちからのアクションが何もないから可能性としては生きてる方が高いって思ったんだ!」


何処かスッキリした様な顔をする刹那は「…まあでも。クロムの発想は怖いけど」と余計な一言を加えた。…うるせぇっての。


「確かに…そうかもしれないね。ちょっと安心したよ。ありがとう!クロム!」


俺に向かって屈託のない笑顔を向け、礼を言ってくる稀琉。ロスといい稀琉といい…能天気な奴等だ。


「…あくまで可能性の話だ。早くしねぇといけないのには変わらねぇな」


「そうだね。稀琉も多分聞き込みの時にロゴを見られてるから明日は気をつけてね」


「うん。クロムも気をつけてね!」


「ハッ。俺よりお前だろうが。面倒だから捕まんなよ」


「もちろん!オレだって用心するよ」


こうして情報を整理した俺等はその後すぐに解散となったが稀琉がしつこく食堂に誘ってきてとにかくウザかった。


「たまには一緒に食べようよ!」
「断る」
「そんな事言わないで!ほら!クロムもロス居なくて寂しいでしょ?」
「お前と一緒にすんな。俺は1人でも問題ねぇし、ロスが居ねえと寂しいとか気持ち悪い事言うな」
「お願い!1人で食べるの寂しい!」
「知らねぇよ!嫌だって言ってんだろ!しつこいぞ!」
「お願いー!明日の場所とかも確認したいし!」
「本当しつけぇな!んなもん携帯で送れ!いい加減殴るぞ!」
「そんな意地悪言わないで!おーねーがーいー!」
「おい!引っ張んな!」
「いいでしょ!?減るもんじゃないし!」
「何アホな事言ってやがる!いい加減離せ……ハッ?クソッ…!馬鹿力かてめぇ!引き摺んな!」
「いってらっしゃ〜い」

こいつの何処にそんな力があるのかと思う程、強い力で俺を引き摺っていく。火事場の馬鹿力とでも言うのだろうか。ズルズルと引き摺られて行くクロムを刹那は笑顔で見送った。その後、抵抗虚しく半ば強引に食堂に行く羽目になった。


「ありがとう!」


「…俺は行くなんて一言も言ってないんだがな」


ガヤガヤと賑わっている食堂内に居るだけでも煩わしい。しかし稀琉は嬉しそうに笑っていた。


「まあまあ!ほら!クロムは何食べる?」


呆れ顔の俺とは対照的にニコニコとメニュー表を見せてくる。メニュー表には様々な料理名が並んでいた。久しく食事という食事を摂ってない俺にとってどれも食べたいと思えない物だった。そもそもこいつ…俺が潔癖症なの忘れてるだろ。


「いらねぇ。食いたきゃ勝手に食ってろ」


「えー!駄目だよ!食べないと!」


「さっきまで寝てたから腹減ってねぇんだよ」


適当な言い訳をしてあしらう。こいつは俺を人間だと思ってるからな。流石に適当に言っとかないと面倒だ。俺の適当な言い訳を聞いて驚いた。


「嘘!?お腹空いてなかった!?」


「空いてないな。そもそも俺がこんな所で食事するとでも思ってんのか」


「どういう意味ーーあ」


ここに来て俺が潔癖症なのを思い出した様でやらかしたといった表情をしていた。


「そうだ…クロム綺麗好きだよね…もしかして…こういう大勢の人が食事してる場所って来ない?…そもそもここで食事したりは…?」


「嫌だし、食事なんかしねぇな。こんな誰が何を何処で食ったか分からねぇところで食えるかよ」  


「そうだよね…ごめんね。無理矢理連れてきて…」


「だから嫌だって言ってたんだろ。話聞けよ。分かったらさっさと1人で行ってこい」


「…うん」


あからさまに落ち込んでから漸く自分の食いたいものを選んだ稀琉が受付に行った。暫くするとトレーを持って戻ってきた。「ごめんね。1人で食べるから大丈夫…」とトボトボと椅子に座った稀琉。…こいつ本当にガキかよ。俺は溜め息をついて椅子に座るとそれを見た稀琉は驚いた表情になる。


「え?いいの?」


「…明日の話するんだろ。さっさとあの馬鹿探しを終いにしてぇんだ。それ以外の話しは聞く気ねぇからな」


机に肘をついて目を瞑る。驚いた表情のまま固まっていた稀琉だがまた嬉しそうに笑って「ありがとう!」と俺に抱きつこうとしてきたのでメニュー表で阻止する。


「いたっ!」


「やめろ抱きつき魔。…いいか。もしこの俺の前で行儀の悪い事や汚ねぇ真似しやがったらすぐ戻るからな」


こいつはマナーが悪くなかったと思ったが念には念を入れて忠告する。


「分かってるよ!本当にありがとうね!嬉しいよ!」


「………」


本当に嬉しそうにしている稀琉を見て俺は前を向いた。


「ねーねークロム!クロムの好きな食べ物って何?」


「…いきなり話を脱線させんな。戻るぞ」


「待って待って!じゃあーー」


それから稀琉はずっと俺に話し掛けてきた。俺への質問もしながら、自身の好きな物や最近ハマっている物等。俺がどんなに適当に返事をしても留まることを知らず、結局稀琉が食い終わっても暫く話し続けていた。最後まで俺がこの場に居たのは合間合間に仕事の話があったからだ。策士なんだか、ただのお喋りなのかは分からねえが、よくもこんなに話が尽きない物だ。俺との約束もきちんと守っており、このお喋り量の割に綺麗に食べていた。


「………」


殆ど変わらないペースで話し続ける稀琉にある意味感心した。確かにこのお喋りなら1人でいられねぇのかもな。


「…よく喋るな」


「え?そうかな?」


思わず口に出た言葉に稀琉は即座に反応してきた。


「こんだけ喋ってて自覚ねえのがな。そりゃ1人でいられねぇな」


「うーん…確かに話するの好きだけど、1人でご飯食べるのが寂しくて嫌いなだけ」


困ったように話す稀琉の声に顔を見ると何処となく寂しそうな顔をしていた。 


「…そんなに1人で飯食うの嫌なのかよ」


「うん。任務で難しい時もあるけど出来れば誰かと一緒にご飯食べたい。やっぱり1人は寂しいもん。だから今日はクロムが一緒に居てくれて嬉しかったよ」


「……ふーん。俺には分からねえな」


やはり何処か寂しげに話しつつ、そう言って笑う稀琉に俺は一言だけ返した。その後、片付けを済ませ自室に向かった。途中「まだお腹空かないの?」と聞く稀琉に「元々そんなに食うように見えるか?」と聞き返すとそれ以上は何も言わなくなった。


「今日はありがと!お陰で寂しくなく食べる事が出来たよ!」


余程嬉しかったのであろうか。いつもの稀琉よりもテンションが高い気がした。…ただでさえうるせぇのに、これ以上うるさくすんのはやめてくれと思いつつ返事をする。


「また良かったら話聞いてよ!クロム話聞くの上手だし!普段はあまり話せないから!」


「馬鹿言うな。うるさくて敵わねえよ」


「そんな意地悪言わないでよー」


「意地悪じゃねぇっての。明日からはあの馬鹿と今まで通り食えよ」


「!」


ハッとしたような顔をして俺の方を向いた。俺は「明日には戻ってくるだろ」と言って前を向いた。


「…うん!そうだね!明日よろしくね!」


「よろしくされたくねぇ所だがな。…まあ さっさと見つけ出してぶん殴る」


「あはは!クロムらしいや。それじゃありがとうね!おやすみ!」


そう言って笑う稀琉に俺は手だけ上げて自室に戻った。
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