Devil†Story
再び自室に戻り、今度は一目散にベッドに横になった。結局稀琉に付き合わされたので本を借りて来れなかった。目元を腕で覆う。


「……疲れたな」


本当はもう一度シャワーを浴びたかったが、疲れたので諦める事にした。あんなに話を聞かされたのは久々だ。ロスも喋るがあそこまでずっと話しては来ない。稀琉の奴はきっと俺と"仲良し"になろうとしてるのだろう。今日の話だけでもそれが分かる位…俺と仲良くなれると信じている。


「……馬鹿だな」


その姿が輝太と重なり思わず言葉として漏れ出した。どいつもこいつも…相手を見極めない。俺が誰かと馴れ合う事は二度とないというのに。


「………」


静かな部屋に時計の音だけが鳴り響いている。その時、ポケットに入れていた携帯のバイブが鳴った。そういえば…ロスがいねぇからそのままにしてたな。俺は取り出して携帯を開いた。メールが来ており相手は稀琉だった。今日の食堂への強制連行に対しての謝罪と食事の礼、明日のスケジュール確認が馬鹿丁寧に書かれていた。 


「まだ別れてから30分も経ってねぇのに…律儀な奴だな」


さっと目を通す。特に問題はなかったので「了解」とだけ打って返す。携帯を閉じようと思ったがふと気になる事があり、ネットで検索を始めた。先程ロゴの話が出た時に刹那が「こないだのクレーム処理の時に書き込みを見たんだけど、そこにもロゴについて聞いている書き込みがあったから」と俺を若干睨みつけながら言っていたのだ。
うるせぇロスが居ないので何気なく調べてみようと思い立った。要は気まぐれだった。書き込みを見てみると俺が書いた書き込みはもちろん、匂いに対しての書き込みは全て消えていた。恐らくそこにロゴについての質問もあったのだろう。無駄足だったかと思い、やめようと思った俺の目に気になる書き込みがあった。


「…ん?これ……あぁクソッ…。やっぱ俺とロスの事じゃねぇか」


「イケメン発見!黒髪と赤のカラコンをした店員さんが居て幸せ〜!もう1人の髪の長い人も綺麗過ぎてヤバかった〜!」となんとも馬鹿丸出しな文章で書き込みがされていた。


「刹那の野郎…俺の書き込みは消せって言ってるのにサボりやがったな…」


ロスは兎も角、俺は目立つ事が極端に嫌いだ。フードを被っている理由も単純で、目立ちたくないからであった。舌打ちをしながら何気なく書き込みを目で追っているとその書き込みにはレスがあった。


ーーその赤い目の人って2人いたの?
「初めまして…の方かな?そうだよー!」
ーーどうもどうも。服の何処かにカフェのロゴ入ってた?
「んー…殆ど顔しか見てないけど確かあったような…」
ーーそうなんだ。どーもね。
「いいえー!貴方もイケメン好きなの?イケメンはいいよね!
ーーフフッ。そうだね。用事があるんだ。後…友達は一緒にいるよって伝えたくて
「?どう言う事?」
ーー気にしないで。情報ありがと


レスに気になる言葉があり指を止める。


「…これは…麗弥の事か?だとすれば狩人が書き込んでるって事か」


書き込み時間を見ると今日の昼頃に書かれた書き込みだった。刹那がネットの確認するのは2〜3日の間に一度だ。特に俺が仕掛けた書き込みの対応に追われていたのなら少なくとも今日は見ないだろう。その時間帯についていたレスだった。


「…書き込みを見るに…狩人は俺かロスに用があんのか?」


他に赤い目で調べると別の俺らの書き込みが何個かあり、その全てにレスが付いていた。全て同じ人物だ。


「…Yって名前の奴からの書き込みだな、全部。…チッ。だから表の仕事は嫌なんだ。俺が嫌いな目立つのオンパレードじゃねえか」


今日何度目か分からない舌打ちをして悪態をつく。俺は自分の容姿が目立つ事を知ってる。自分の容姿が過去に何度、気味悪がられたか覚えてない。その理由は特に目の色だった。何故か俺の目は生まれつき紅かった。黒髪に血の様な紅い目……。気味悪がられても仕方ない。
ロスと初めて会った時に「珍しいな。悪魔じゃねぇのに目が紅いなんて」と言われた事を思い出す。
まあ違う目の色だったとしても、悪魔と契約するとその証として、契約の種類によって体に逆十字架に悪魔の羽が描かれた“血印”が現れる。その時に目の色も青だろうが、黒だろうが赤に変わるらしいんだが。元々目が紅かった俺は契約時に血印が出ただけで殆ど変わってない。


何故、俺の様な目の色の人間が生まれたのかは定かではない。俺には物事ついた時の記憶しかないし、その時には既に施設に居たから自分の出生については殆ど不明だった。知ってるのは自分の容姿と名前だけ。


「…"クロム"…か」


俺は"今"の名前を呟いた。初めからこの名前だった訳じゃない。元々は別な名前だった。でも…俺はその名前が嫌いだ。…二度と聞きたくない位に。だから“名前は?”とロスに聞かれた時に答えなかった…いや、答えられなかった。まあ部屋に落ちていた紙にその時の名前が書かれてたから、あいつも元々の名前を知っているんだが。黙る俺の様子に見かねたロスが今の名前をつけた。人間の嫌な事をするならそのまま呼んでも良いのに…本当に変わっている悪魔だ。


―お前なんて名前だ?……◯◯って言うのか?…あれ?無視?…いや、嫌なのか。その名前。んー…名前無いと不便だし仕方ないな…俺がつけたげるよ―


契約時に交わされた会話が脳内で再生される。しかしすぐに冷静になり現実世界へ戻った。


「…………キモ。浸ってるつもりかよ」


どうも1人で居ると余計な事を考えるようだ。会話等の刺激がない環境が久しぶり過ぎてそうさせたのか。そうじゃなくとも稀琉に食堂に付き合わされたり、クローと話したり、久々にあいつ(ロス)の本性を見たり…色々あったからだろう。だが余計な事を考えるのは終わりだ。目の事とか名前とか…そんなもんどうでも良い。今やらなきゃならねぇ事は情報整理だ。


再び携帯に目を向けるが、それ以降の書き込みにはめぼしいものはなかったので携帯を閉じてベッドの脇に投げ置いた。狩人は大体復讐者だ。俺やロスを探してると見立てると…過去に俺が葬った奴等の親しい人間が復讐しようと目論んでいるのだろうか。
過去に殺してきた奴等の事は殆ど覚えていない。流石に最近殺った奴等は覚えているがどれもこれもくだらない理由だ。覚える必要もない。その中で勝手に復讐に燃えてる奴も居るのかもしれない。俺がしている行為はそういう行為だ。恨まれるのは当たり前だろう。

ただそれは人間の場合だ。今回は相手が魔物だ。ロスも言っていたように俺は魔物を殺した経験はない。そもそもなんで魔物が狩人みたいな事をしてる?仮に人間に雇われたとしても餌としてしか見てないあろう人間を殺した位で、仮にその人間を気に入ってたとしても手を貸してくるとは思えない。…単純に俺とロスに用があるのか。答えのない考えに段々と眠気が襲ってきた。…明日も早めに片すって言ってたからな。早めに寝ねぇとこないだのクソ神父の時みたいな失態を晒すハメになるからな。稀琉の前であんな事やらかしたら洒落にならん。電気を消して俺は寝る準備を進める。


「…………」


再び訪れた沈黙に俺は目を閉じた。それから数分としない内に俺の意識は眠りの中に消えていった。
< 91 / 539 >

この作品をシェア

pagetop