やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「・・・・・・。」
私は、あえて口には出さなかったが、真木ヒナタと同じように確信に近い嫌な予感を感じていた。
「あっ、葵様が出てこられましたよ。」
執事が、私達に声をかける。
葵は、部屋に入って来ると一段高くなっているステージのような所に上がり、その上においてあった、豪華なイスに座った。
まるで、女王様のような感じ。
部屋にいるすべての視線がステージ上の葵に注がれる。
「それでは、本日は、葵様の婚約発表においでくださいまして、誠にありがとうございます。・・・・・・・・」
ステージの葵の横に立っている椿 麗子が、挨拶を始めた。
「・・・・・・・・それでは、葵様の婚約者登場です。」
椿 麗子は、最後にこの言葉とともに、近くの出入り口を指差した。
一同の視線が、指差されたドアに集まる。
私は、ドアに注目しながらも、確信に近い悪い予感を消せないでいた。