やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】

第4節:婚約発表





椿 麗子の指差したドアが開き、男性が一人入ってきた。



その男性は、175cmくらいの身長で、均整のとれた体格、そして何より、爽やかな顔つきが印象に残る。



スムーズな足取りで葵の前へと進む。



男性の両手には、零れんばかりの赤い薔薇の花束が握られていた。



その薔薇から色気のある香りが漂ってくる。



その香りとその男性の爽やかな顔つきのアンバランスさが、なんともいえないハーモニーを醸し出していた。



すでに、その場にいた女性達は、まるで一目ぼれに落ちたかの様な視線をその男性に送っている。



そんな中、葵は、別に興味もなさそうにその男性をまったく見ようとはしなかった。



「・・・・あれが葵様の婚約者ですか・・・」



執事が私の横で小声でつぶやく。



「・・・龍一さんの方が、カッコイイですね。」



私は、小声で、少し恥ずかしそうに執事に言った。



そんな私に執事は、クスリッと微笑むと、



「小夜さん、当然です。」



黒く輝く綺麗な髪をかきあげながら言い切った。



そして、私と執事は、微笑みながら見つめ合う。

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