やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「・・・・さっき、あの爺さんの懐に包丁みたいなのが見えたんだけど・・・」
サブは、お爺さんの方を向いたまま、小声でつぶやいた。
「・・・包丁・・・ですか?」
私も、サブと同様にお爺さんを見つめた。
お爺さんは、どこででも見かけるような白髪で腰も曲がっており、歳もすでに70歳近いような感じだった。
「・・・・・サブさんの間違いじゃないですか?」
どうにも信じられない私は、サブに言った。
そんな私には取り合わずに、お爺さんを見続けるサブ。
「・・・あっ、やっぱり、あの爺さん、懐に包丁入れてるよ。」
サブが、立ち上がると、お爺さんの側まで歩いていった。
いかにも、チンピラな格好をしているサブが近づいてきて、驚いた表情になるお爺さん。
何度も、サブの顔を見たり、逸らしたりして落ち着きがなくなる。
「・・・爺さん・・・。」
サブが、お爺さんに声を掛けた。
「ちょ、ちょっと待ってください。すぐにお金を作りますから。」
お爺さんが、焦ったような表情で震えた声でサブに言った。
「んっ?どういうこと?」
サブは、お爺さんの言う意味が分からずにお爺さんに聞き返した。