やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
加藤刑事は、3階まで上がると取調室と書かれた部屋のドアの前で立ち止まった。
「そこに大和がいるのですか?」
後ろから加藤刑事に話しかける執事。
「・・・そうなんだがな。」
トンットンッ。
執事に背中を向けたままで答えた加藤刑事は、目の前の取調室のドアを軽くノックした。
「・・・・・・持って来たか?」
部屋の中から組長の声が聞こえてきた。
「いや、だから、急に言われても無理なんだよ。」
組長の声に答える加藤刑事。
「だったら、ここは開けない!」
そう言うと、それから、加藤刑事が、何を話しかけても、取調室の中から組長の声が聞こえてくる事はなかった。
「何があったんですか?」
取調室のドアから少し離れたところに移動した後で、執事が、加藤刑事に尋ねた。
「実はな・・・大和、取調室に立てこもってしまったんだよ。」
困ったような表情で答える加藤刑事。