やくざと執事と私【第3部 上巻:ラブ&マネー】
「グギギギギギィ・・・・・・。」
落ちないように大和は、すべての力を振り絞って木にしがみついている。
大和のひたいからは、あっという間に滝のような汗が噴き出してきた。
芝生の上では、満足そうな表情の美奈が、仲の良い家庭のおままごとをしている。
(・・・・どれくらい、この状態なんだ・・・。)
大和は、疲労で遠のく意識を必死でつなぎとめながら、ひたすら木に捕まっていた・・・・コアラのように。
「ちょ、ちょっと、待ってください、組長!」
思わず、私は、組長の話の途中で口をはさんだ。
「ん、どうした、小夜?」
組長は、壁際に立っていた私に顔を向ける。