eye line
まだ少し肌寒い外は、ようやく微かに春の香りが漂ってきた


彼女と付き合って半年が過ぎたあたりだろうか


風邪を引かないように厚着をし、カイロをポケットに放り込み、僕は彼女に誘われた近くの公園へと出掛けた


着くなり僕は少し冷えたベンチの表面を軽く手で振り払い、ゆっくりと腰を下ろした


日は沈みかけていた


ほんの数分経つと、僕と同じように厚着をしてきた彼女が、僕の隣に座っていつものように他愛のない話をし始める





どれくらい経っただろうか、辺りが暗闇に包まれ、公園は明るくお洒落にライトアップされていた



そして少し沈黙があったあと、ふと彼女は自分の病気のことを話し始めた


遺伝するのかとか、治ることはあるのかとか、小さい頃の様子だとか



彼女がひととおり病気の話を終えると僕に私のことを嫌いになったかと聞いてきた


僕はそんなことで嫌いになるわけがなかった



僕は真穂が生まれつき障害を持っていても、それもひっくるめて真穂という人間が好きなんだと






僕がそのことを伝えると、いつも明るい彼女は顔をくしゃくしゃにして泣いた












僕が彼女の涙を見るのは、これが最初で最後だった
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