ひきかえせない・・・
「お母さんの買い物が済んだら、乗り物に乗ろうね」
子ども達に約束をしてから、2階にあるCDショップに行く。誠吾は人気のあるミュージシャンなのか、デビュー3周年のコーナーが設けてあった。そこから1番新しいアルバムを手に取る。でも、やっぱりデビュー当時のものから聴いてみたい。手に取ったアルバムを元の位置に戻すと、「ファーストアルバム」と書かれているCDを手にレジに行く。
「これ買ったら遊べるんだよね?」
と、娘が私の顔を見上げて、目をキラキラと輝かせながらたずねる。私が笑顔でうなずくと、ニッコリ笑って、弟の頭をなでる。子ども達を乗り物に乗せている間も、誠吾のことが頭から離れない。早く家に帰って誠吾の声を聴きたい・・・。今まで忘れていた感情が湧き上がって来る。帰りの地下鉄の中で、息子はスヤスヤと眠っていた。娘は、「楽しかったね」を連発して、ご機嫌だった。私は、今、自分の心の中の大半を誠吾が占めていることに、少しだけ罪悪感を覚える。
家に着くと、息子をベビーカーから降ろし、ベッドに寝せる。さっきまで元気だった娘もやっぱり疲れたようで、ソファに寝そべっている。バッグの中には、さっき買った誠吾のCDが入ったまま。しばらく、娘の背中をとんとんと叩きながら、寝入るのを待つ。
ふたりが眠ったのを確かめてから、ヘッドフォンでCDを聴く。中学時代、数回しか聞いたことのない声だけれど、やっぱり誠吾の声だった。部活の時、友達と話しながら歩いている誠吾とすれ違った時、聞こえた少し掠れた声。ラジオから聴こえて来た時、私はすぐに気付いたのだ。終わりにしたつもりでいても、本当は消化しきれていなかった誠吾の存在。その日から、誠吾の声であることを確かめるように、私は何度も何度もそのCDを聴いた。
子ども達に約束をしてから、2階にあるCDショップに行く。誠吾は人気のあるミュージシャンなのか、デビュー3周年のコーナーが設けてあった。そこから1番新しいアルバムを手に取る。でも、やっぱりデビュー当時のものから聴いてみたい。手に取ったアルバムを元の位置に戻すと、「ファーストアルバム」と書かれているCDを手にレジに行く。
「これ買ったら遊べるんだよね?」
と、娘が私の顔を見上げて、目をキラキラと輝かせながらたずねる。私が笑顔でうなずくと、ニッコリ笑って、弟の頭をなでる。子ども達を乗り物に乗せている間も、誠吾のことが頭から離れない。早く家に帰って誠吾の声を聴きたい・・・。今まで忘れていた感情が湧き上がって来る。帰りの地下鉄の中で、息子はスヤスヤと眠っていた。娘は、「楽しかったね」を連発して、ご機嫌だった。私は、今、自分の心の中の大半を誠吾が占めていることに、少しだけ罪悪感を覚える。
家に着くと、息子をベビーカーから降ろし、ベッドに寝せる。さっきまで元気だった娘もやっぱり疲れたようで、ソファに寝そべっている。バッグの中には、さっき買った誠吾のCDが入ったまま。しばらく、娘の背中をとんとんと叩きながら、寝入るのを待つ。
ふたりが眠ったのを確かめてから、ヘッドフォンでCDを聴く。中学時代、数回しか聞いたことのない声だけれど、やっぱり誠吾の声だった。部活の時、友達と話しながら歩いている誠吾とすれ違った時、聞こえた少し掠れた声。ラジオから聴こえて来た時、私はすぐに気付いたのだ。終わりにしたつもりでいても、本当は消化しきれていなかった誠吾の存在。その日から、誠吾の声であることを確かめるように、私は何度も何度もそのCDを聴いた。