初恋
気づいたら、泣いていた。


「おれはまだあと2年も学生だし――こんなこと言える立場じゃないってことはわかってる。でも」


かたまったあたしの手のひらから箱を抜き取り、その長い指先が細いリングをとらえた。

それと一緒に――彼の右手が、あたしの左手をそっとつかむ。


「おれと、ずっと一緒にいてほしい。必ず幸せにする」


左の薬指に、冷たくまとわりつくような――異物を感じる。


決して、不快ではない。

むしろ、心はどこかほっとしていた。


あたしの左手に指輪をおさめた雄太は、静かな焔を宿した瞳で、あたしを見上げた。


「――先生よりも、絶対に幸せにする」


くちびるが重なった瞬間、あたしの瞳からはまたさらになみだがあふれだした。

ぽろぽろとこぼれ落ちるなみだをぬぐってくれた雄太の指先は、

あたたかくて、

優しくて――





忘れていた何かが、あたしの中で静かにきらめくのを感じた。



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