僕の街には今日も雨(涙)が降る…。

五、いつでも待ってるよ

 飛夏羽は自分自身を落ち着かせ、壁を伝いながら立ち上がると、急いで自分
の部屋に駆け込み、携帯を手にした。
その相手とは…

「もしもし?」
「…優都?今から会える?」
「会えるけど…」

 飛夏羽が一番この事を伝えたかったのは、優都だった。

 優都は自分の心の支え、大切な人だ。

 電話を切ると飛夏羽は急いで身支度をして優都の家へと走って行った。

 ピンポーン…チャイムが鳴り終えるか終えないかの速さで優都が出てきた。

「如何したの?」
「…あのね…兄さんが…東京に…来るんだって…」
「お兄さんが?」

 飛夏羽はゆっくりと頷いた。

「お母さんから電話が掛かってきて…吃驚しちゃった…如何しようも…ないよ
ね…」

 飛夏羽の切ない顔を見て、優都は黙り込んでしまった。

「…ごめん。」
「え?」

 優都は顔を上げて飛夏羽を見た。

 飛夏羽は優しく笑って後ろを向いた。

「こんな事相談されたって…分かんないよね。ごめん、本当に…夜中なのに…
ごめんね?」

 階段に足を掛けた途端、飛夏羽は足を踏み外した。

「きゃああ!」
「飛夏羽!」

 飛夏羽が地面に叩きつけられるのとほぼ同時に優都が階段の上から飛び降り
て飛夏羽を抱き起こした。

「飛夏羽!大丈夫か!?」
「…うっ…ごめん…私…滅茶苦茶だよね…」
「そんな事ないよ!」

 自分を責め続ける飛夏羽を優都は確りと抱き締めて慰めた。
飛夏羽は優都を離して、ゆっくりと立ち上がった。

「大丈夫だよ…帰れるから…帰るよ。」
「今日は泊まっていきなよ。」
「だって迷惑すぎる。…こんなの…迷…惑…」

 飛夏羽はゆっくりと目と閉じ、その場に倒れ込んだ。

「飛夏羽!しっかりしろよ!」

 優都は飛夏羽を抱き抱え、自分の部屋へと連れて行った。
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