僕の街には今日も雨(涙)が降る…。
 しばらく走っていくと、優都がジャージを着て歩いていた。

 飛夏羽は深呼吸をして優都に声を掛けた。

「優都…君!」
「…飛夏羽ちゃん?」

 優都はゆっくり振り返って飛夏羽を見た。

 飛夏羽は綺麗にたたんであるブレザーを優都に渡した。

「…昨日は…ありがとうございました。借りちゃって…」

 飛夏羽は目を逸らして頭を下げた。

「…大丈夫だよ。」

 優都も飛夏羽から目を逸らしブレザーを受け取るとそのまま前を向き、歩い
ていった。

「…はぁ…」

 飛夏羽は優都が行った後に溜息を吐いて優都の後姿を静かに眺めていた。

「ニャーオ…」
「んっ?」

 飛夏羽の頭の上から猫の声が聞こえ、飛夏羽が顔を上げて木の上を見た。

「あ!猫!」
「…え?」

 飛夏羽は周りに誰も居ない事を確認して鞄を地面に置くと木に登った。
まだ6時半だったので、幸い人は居なかった。

 飛夏羽はさっさと木に登り、子猫の所まで直ぐに辿り着いた。

 優都は陰から飛夏羽の様子を見ていた。

「よしよし。もう大丈夫だからね。」

 黒い子猫は飛夏羽に擦り寄り、飛夏羽は優しく笑って子猫を抱き締めると地
面に降りようとした。

 飛夏羽が降りようとした瞬間、飛夏羽は目の前が真っ暗になり、そのまま木
の上から落っこちてしまった。

「…う…」
「ニャーオ…」

 飛夏羽は貧血で倒れ、気を失ってしまったのだ。

 丁度その時猛スピードでトラックが走ってきた。

「危ない!」

 優都は直ぐに走ってきて子猫と飛夏羽を抱き抱え、反対側の道路に飛び移っ
た。

 トラックは飛夏羽達を無視して走っていってしまった。

「…飛夏羽!?」

 飛夏羽の顔色は真っ青で、やつれていた。

 優都は飛夏羽を背負い、猫を手に抱き抱えると急いで学校へ走って行った。
< 67 / 73 >

この作品をシェア

pagetop