プラチナの誘惑
「昴…」

気になりだしたのは、きっと入社してすぐ。
見た目の格好良さに惹かれただけだとその気持ちに蓋をして過ごしてきた。
そんな自分の気持ちを洗い直して呼び戻したのは


まるで美術館のような
居酒屋に連れて行ってくれたあの夜。
何年も前にニューヨークで私を見かけただけで、私の好みを察してくれた。

単にそんな事だけど、私の気持ちを揺らすには十分なほど…それまでの私は、私の気持ちをまっすぐに考えてくれる人や心に飢えていたから…。

昴から落とされるキス。
突然の事に意味もわからなくて戸惑いながらも…ようやく素直に好きだと認めた途端に知った事実。

『忘れられない女』

『本気の女』

大人になったら、私一人だけを愛して側にいさせてくれる恋人に出会うんだと、それが当たり前だと信じていたのに…。

いつまで私は寂しく切ないままでいればいいんだろ…。

昴を好きな気持ちと同じだけ、愛してもらえるのは夢なのかな…。

まだ眠る昴の唇に、軽く私の唇を合わせて。
起こさないようそっと
ベッドからおりた。

創立記念パーティーの
買い出しの前に、自分の部屋に帰って着替えよう。

身体中に咲いている赤い花を見ると、本当に昴に抱かれた夕べを実感して嬉しくなるけど…。

ほんの少しの後悔と折り合いをつけるためにも…
一人になりたい。
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