プラチナの誘惑
「すば…んっ」

ぐっと後頭部から引き寄せられた私は抵抗する間もなく…。

唇には温かい昴の唇が…。
決して乱暴でもなく無理強いするキスでもないけれど。
優しく味わうように触れて、何かを刻み込むように…。

あまりにも突然で…慣れてない事に呆然と私の意識は飛んでしまった。
逃げようとすれば逃げられる…。

それでも動けずに立ち尽くす私の唇を、軽く舌でなぞった昴は、すっと離れて

「着いたぞ」

あっさりと私の背中を押した。
ちょうど扉が開いて、押されるがままにエレベーターから出ると。

「また後で」

と背後から声が聞こえた。

はっと振り向くと、何かを企んでそうな怪しい笑顔を浮かべた昴を乗せて。

エレベーターは閉じた。

『また後で』

ってどういう事?
それに…あのキスって…。

冗談にしては優しいキスだった。

まるで私を大切な恋人のように触れて。

それでも…。

女の子には不自由していない昴の瞳を信じるなんてできそうもない…。
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