プラチナの誘惑
宣伝部に戻って、午後からの打ち合わせの準備をする最中も。
ふと気づけば昴の唇の温かさを思い出している。
初めてのキスではないけれど、経験値の浅い私には初めての大人のキス…。
大学時代に恋人はいたけれど、付き合って欲しいと言われて何となく頷いて。
キスの先に進むほど好きになる事ができなかった。
体を重ねる時間を持とうとしない私がふられるのは早かった。
もともと自分に自信もなく、親からの言葉を重く感じ取って…頭も顔も性格もいい姉さんの陰で育った私。
もっと恋愛に長けていれば…昴からのキスにも、もっと軽く笑って応えられたのかな…。
昴の気まぐれに違いない言葉にも、こんなに揺れる事はなかったのかな。
…はぁ。
小さくため息をついて、
手元の資料に意識を集中した。