プラチナの誘惑

「…赤ちゃんにはいつ会えるんだ…？」

それまであまり話さなかった小椋さんの言葉に、野崎さんの肩がぎこちなく震えた…。

振り向いて、苦しげな視線を向けて…。

「水曜日…。帝王切開の手術を受けるから、その日に会える…」

実際に、笑い泣きなんて見る機会はそうそうない。

初めての泣き笑いの表情…というより殆ど泣いているような野崎さんの表情と声に息をのんでしまう。

「…柚ちゃんがこの家で暮らせる日はちゃんと来るよ…。
神様は平等だ」

淡々と…それでも力強く語る小椋さんと、隣で頷く日和。

ただ単に…野崎さんは赤ちゃんが産まれる事を積極的に喜んでないのかと感じていたけれど。

違う。
そんな事ない。
完成間近のこの家の中で、一番日当たりも良くてかなりの広さをとった子供部屋。
子供の誕生を楽しみにしてないなんて絶対にない。
周囲の環境だって、子供を育てるにはちょうどいい郊外…。