プラチナの誘惑



ガラス張りの明るいカフェの奥のテーブルにいた昴は、黒のシャツにジーンズで、薄いニットのセーターを軽く着ていた。

夕べも見たけれど、会社で見るスーツとは違って新鮮で、格好良さも5割増し。
…ふっと浮かぶそんな気持ちを顔に出さないように気をつけながら近づいて、

「…遅くなってごめんね」

急いで来たせいか、少し息が上がり気味に謝って向かいの席に座る。
コーヒーを飲みながら雑誌を読んでいた昴は、ちらりと私を見て

「昼食べたのか?」

感情の読めない声に、鼓動は大きく跳ねるけれど、それもうまく隠しながら

「…食べてない。
でも大丈夫。早く買い物しなきゃ今日中に全部揃わないし…」

「…リストにあった幾つかはもう買ってある。
あとは女性用の下着だとかアクセサリーだとか。
俺には選べないから残してある」

「え…。ごめん。

私が遅くなったから…。
一人で大変だったでしょ…」

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