プラチナの誘惑
「ふうん。その割にテンション低いけど。
…せっかく彩香が気に入ると思ってこの店連れて来たのに」

苦笑しながらビールを飲んでる昴をそっと見る。

「私が気に入る…?
…まぁ、かなり気に入ったけど、何でそう思ったの?」

これまで、同期みんなで飲んだことはあっても二人で飲んだ事もないし、個人的な話なんてしたこと…ないような気がするけど。

「んー。メトロポリタンにいる彩香見た時から、この店気に入るかなあって思ってたし」

なにげにあっさりと…。
揚げだし豆腐を食べながらつぶやく流れに、私も単純に頷きそうになったけど。

メトロポリタンって…。

「え…?ニューヨークに
行ってたの?
嘘っ。会わなかったよね」

慌てて記憶を探るけれど、ニューヨークで昴にあった記憶はないし。
それどころか、ニューヨークにいた時の記憶なんてメトロポリタンをはじめとして美術館を朝から晩まで回ってた記憶しかない。

「じっと作品の前に立って見続ける彩香を、俺が勝手に見てたの。
何回か遭遇したけど、お前気づかないし」

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