プラチナの誘惑
「あの…」

逢坂さんの言葉の意味が理解できなくて、どうしていいのか戸惑ってしまう。

私のデザイン力って…。
確かに布絵本は作ったけれど、あとは商品化カタログや会社案内を作って…。
あ…販促グッズもいくつかデザインしたけれど、それだけなのに…。

今までに宣伝部以外の人から何も言われた事もない。

私の怪訝そうな様子に、逢坂さんは優しく笑って。

「よっぽど大切に育てられたのね…宣伝部に」

「…え?」

「ふふ…。宣伝部には
ひっきりなしに彩香ちゃんをくれ…っていう打診があったらしいもん。
何も気づいてないって、
よっぽど宣伝部は手放したくなかったのね」

からかうでもなく冗談でもなく…。
温かさが漂う口調をそのまま信じてしまいそうになる。

やっと自分の居場所を見つけたと思っていた矢先の異動は、単純に、私を手放しても何の支障もないって思われてるからだと思っていたけれど…。

違うのかな…。


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