プラチナの誘惑
思いがけない話に、気持ちが揺れて感情も落ち着かなくて。
自分の会社内での存在位置や意義とか…いっぱい溢れる想いをぼんやりと整理していると、

「…彩香。しばらく一緒によろしくな」

隣に座ったのは、

「壮平…。こちらこそ」

にっこり笑って話し掛ける同期の小橋壮平。
入社以来、特別に仕事のつながりもないせいか、同期の宴会の時くらいしかちゃんと話す機会もなかった。
それでも、同期の結束の強い中で自然と親しくなった。

営業成績は伸び盛りの若手だと聞いている。
人当たりの良さと爽やかな容姿は営業にうってつけ。

営業部で唯一の同期だからか、昼間の打ち合わせの時から優しく気をつかってくれて、少しホッとする。

「…飲んでる?」

まだ半分以上残っているビールの瓶を手に取って聞くと、

「かなり飲まされた。
でも、彩香のビールを
飲まないわけにはいかないよな」

軽く笑って差し出されたグラスに並々と金色の
おいしそうなビールを注ぐ。
< 77 / 333 >

この作品をシェア

pagetop