涼×蘭
文庫本を半分ほど読み終えるくらいの時間が経ってから、玄関代わりの扉の辺りが急に騒がしくなった。雛達が帰ってきたのだろう。

出迎えよう、と読み掛けの本を閉じ、ベッドから起き上がって部屋のドアを開ける。

「かーずき! ただいま!」

「ぉふっ!? お、おかえりっ!」

ドアを開けるとそこにはすでに雛が居た。あまりに驚きすぎて変な声が出たが気にしないでもらいたい。

「かーずきっ!」

「うおっ!? どうした?」

「ふふっ、何でもなーい!」

何の前触れも無く雛が抱き着いてきた。パニエを穿いたスカートの柔らかさ以外の何かが俺の胸板の下に当たっている。……この抱擁を喜ぼう。
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