ラブリーホーム*先生の青③




ホテルの部屋で
彼女がブーツを脱いだ時
落胆した



イチと同じ背格好だと
思ったのに



ブーツを脱いだ彼女の背は
だいぶ低かった



まあ、いいや



そう思えたのは
キスをするまで



ベッドに座り
肩を抱いて
唇を重ねると



………無理だ



はっきり分かった



唇の厚さが違う
柔らかさも違う



舌を入れた時の
味が全く違う



イチの口の中は
美味しかった



甘くも しょっぱくもないけど
イチの口の中は
どんな物より美味しい



唾液だって汗だって
イチの身体から出る物
全て飲み干したいと
いつも思った



誘っておいて
めちゃくちゃ失礼だけど
体調が悪くなったとか
適当に言い訳して



逃げ出すように
ホテルを出
雪の降る道を走った



イチに会いたいって
願いながら


イチが欲しい


だけどもう叶わないって
泣きながら





だから
フミが亡くなった時
イチの方から連絡をくれた事



   先生。
   私、今から行きます。




はっきり言ってくれた
イチの声が
2年以上経った今でも
はっきり残ってる





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