ラブリーホーム*先生の青③




ずっと郁弥くんは
申し訳なさそうに
うつむいてた



学校を出て

「タクシーで
真っ直ぐ病院に行こう」

毎日ずっとお腹が痛いなんて
なにか病気だったら大変だ



「……ごめんなさい」


私を見上げ
郁弥くんは困った表情で


「違うんだ
ボク、大丈夫だから」


「大丈夫じゃないよ
毎日お腹が痛いなんて」


「でも、病気じゃないんだ」


病院には行かない


また頑なに拒まれ
とりあえず家に帰った



郁弥くんをベッドに寝かせ


「少し休んだら
やっぱり病院行こう?
このままじゃ私、心配だよ」


「本当に違うんだ
ごめんなさい」


掛け布団に手を置き
ふと思った


ごめんなさい
何かしら この子は
いつも謝ってる……


「市花さん、ごめんなさい
ボクね、本当は
朝ごはん食べないんだ」


「え?」


思いがけない告白に
少しすっとんきょうな声が出た



「そういう習慣がなくて
朝ごはん食べたら
午前中、お腹が痛くて……」


「…………」


嫌な顔せず食べてたから
全く気がつかなかった


郁弥くんに
無理をさせてたんだ……


そっか、そっか……


私の沈黙を別な意味に
取ったらしく


「ほ、本当にごめんなさい
朝ごはん食べないなんて
悪いことだから………」


バサッと飛び起きて
郁弥くんはベッドの上
正座をした




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