ラブリーホーム*先生の青③




「えっ、いや、そんな……」



たかが そんなことで
謝らなくても……


「別に大丈夫だよ
そんなことくらい
言ってくれれば良かったのに」


でも
って郁弥くんが うつむいた時



「いーじゃあ?」


青波が 重たそうなお尻を
ぷりぷり させながら
ベッドによじ登ろうとした


「あ、こら青波
お兄ちゃんは
ぽんぽん、いたただよ」


青波はベッドに足をかけたまま
郁弥くんを見上げ


「いちゃちゃ」


「そう、そう
だから………」


青波を抱き上げようとした
私より先に


「もう痛くないよ」


郁弥くんが青波を
よいしょって
ベッドに引き上げた


嬉しそうにベッドの上に立ち
ひざを曲げ伸ばしした青波を
郁弥くんは目を細めて



「……青波はいいな」



小さな小さな声だった



標準より小柄で
幼く見えるはずの
郁弥くんの横顔が
疲れてた





どうしたの?
何かあったの?



優しく声をかけたところで
郁弥くんは何も言わないだろう




出来すぎた笑顔
申し訳なさそうな顔
疲れた横顔



どれが真実の郁弥くんかな?
………なんて


そう思ってる間は
何一つ彼の苦しみを
理解できない



私は いつの間にか
いろんなことを忘れてる



私も彼と同じように
『普通』に必死にしがみついた
時期があったのに―――――





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