雨のあとに
夜空には満天の星が輝いて、月はいつもより光を放っているようだった。月のおかげで灯りがなくても十分出歩くことができた。

どうやらあたしは気を失ってからクォークの町に運ばれたみたい。ここにはお父さんの研究所に行く前に寄った町だったから迷う心配もなく気軽に町を歩くことができた。

だけど夜の町は昼間と全然違って、お店は全部閉まっているからあそこの八百屋にいた元気な売り子の女の子の声も聞こえなかった。特に行きたい所があったワケじゃないけど、夜風が心地良くて何となく歩いて少し疲れたから広場にある長椅子に腰をかけた。

あの夢が気になって頭から離れない、思い出すと怖くて体が震える。うずくまって体を抑えても震えが止まらない。ガタガタ震えていると誰かが背中に手を置いた。顔を上げるとそこには優しく微笑むお父さんの顔があった。

『大丈夫かい?』

お父さんはココアを2つ持って来てその一つをあたしに渡し、隣りに座ってもう一つのココアをすすった。あたしは渡されたココアを見つめてお父さんに話しかけた。

『どうして来たの?』

『目が覚めてしまってね。寝付けないから散歩をしに外に出たら雨の姿が見えたんだ。』

『ココアを2つも持って?本当はあたしが変だって気づいて追いかけて来てくれたんでしょ。』

お父さんはフッと笑ってあたしの頭を撫でた。
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