午前0時の誘惑
疑問ばかりが浮かんでは消える。
海生が私を迎えに来てくれたと思っても……いいの?
「もうおわかりいただけたと思うのですが……」
黒川さんは、私の目の奥を覗き込むようにして見つめた。
「黒川さんは、もしかしたら魔法使いなの?」
「私が魔法使いならば、下に待たせてある車は、さしずめカボチャの馬車とでも言いましょうか。さ、お時間がございませんから、早くお召し替えを」
中から出てきたのは、余計な飾りが一切付いていない、シンプルなデザインの白いワンピースだった。
「よくお似合いです」
着替えた私を見て、黒川さんが形式ばった、いつもの言い回しをする。
「さすがは海生様。いつものことながら、莉良様が一番引き立つものをご用意するとは」
黒川さんが溜息交じりに感嘆の声を上げる。
「魔法なら、いつかは解けちゃうんでしょう?」
「それならば、申し上げましょう。これは現実です。決して夢でも魔法に掛けられたわけでもございません」
これ以上ない微笑みを黒川さんが浮かべた。