午前0時の誘惑

◇◇◇

そこは、いつも私たちが過ごしたホテルの披露宴会場だった。
照明の落とされた広いホールを前にして、ステージには眩しいほどのライトが当てられている。

私は、黒川さんにステージ裏へと無理に連れて来られていた。


「それでは最後に、新社長の婚約者を紹介いたします」


一段高くなっているステージから、嫌な予感のする言葉が聞こえてきた。


婚約発表はなくなったんじゃなかったの?
海生が社長へ就任する姿を見るだけのつもりで来たのに。

舞台のそでに、あの女性の姿を探して目を凝らす。
けれど、どこにもその姿は見えない。

黒川さんの言っていたことは本当だったらしい。


「さ、莉良様、ステージへどうぞ」

「――え!?」


黒川さんにそっと背中を押されて出てみれば、目を瞑ってしまうほどのライトを四方から当てられ、それ以上前へと進めなくなった。
思わず立ち止まる。

< 68 / 72 >

この作品をシェア

pagetop