破れぬ誓い



「遥、起きろ。」


ゆさゆさと身体を揺すられうっすらと目を開ける。


「ん・・・。」

「手紙さっさと出してこい。」

「あっ!!!」


アタシは机の上の手紙をひっつかんで廊下を走る。


「まってっ!待って下さい!」


玄関を出ようとする人が1人。
家族への手紙をだす人の為に江戸へ走る人がいる。


「待って下さい!」

「なんですか?」


アタシの声に気づいたのか振り返り微笑んだその人。
その笑顔の大きなえくぼ。
近藤さんと重なる笑顔。


「あ・・えっと。手紙一緒に届けてくれますか?」

「わかりました。」


もう一度その人は笑って手紙を受け取った。
その笑顔が胸を締め付ける。


「・・・お願いします。」


アタシはぐっと振り返った。
落ちそうな涙。
まだ、近藤さんを失った傷は癒えない。



「あの、遥さんですか?辻村さんですか?」

「そうですけど・・。」



「これを」とその人は私に手紙を差し出す。


「江戸からです。貴方に直接渡すように言われました。」



その人は「それでは。御武運を」と走り去っていった。

貰った手紙の裏を見れば差出人は『沖田総司』となっていた。





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