虹の世界
「本当に……ごめん。」


「…………。」


彼女からの返事が無いまま、ただ、少し後ろを歩く。


あの日、震えていた君は、今、目の前を歩いている。

店を出てから、一度も俺を見ない。

もちろん、会話もない。

あの日の出来事が、どれだけ彼女を傷付けたのか。

胸の奥がずしんと重くなった。











30分も歩くと、なんとなく見覚えのある町並みになってきた。

多分、このまま行けば、いつもの公園。

俺が住む街。

彼女が住む街。

情無いけれど、何も言えずに歩く俺。

前を見たまま、振り返らない彼女。

俺は、必死に言葉を探そうとしていた。

出てくる言葉は、どれもこれもただの言い訳。

彼女に届きそうにない言葉ばかり。



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