おにぎり丼。
「災難だったな」

ヒトシが言った。

「はい……」

「僕がちょうど通りかかって良かったよ」

「何してたんですか?」

「このへんに美味しいラーメン屋があるって聞いて、探してたんだ……ほら、あったぞ。多分あれだ」

そう言って、ヒトシは車を店の前に停めた。

【ぴょん吉ラーメン】

看板にはそう書かれていた。


「おいちゃん、みそラーメン二つ!」

「すまないね。うちは食券制なんだ」

「あ。そうですか」


ヒトシは私の分の食券も買ってくれた。


カウンターに並んで二人でみそラーメン。

安心したら、涙が出てきた。


「さめないうちに食え」

ヒトシはそう言って、頭を撫でてくれた。


「お嬢ちゃん、これ使いな」
と、マスターがボックスティッシュの箱を差し出してくれた。


みそラーメンは、どこか懐かしい、ほっとするような味がした。
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