【短】雪の贈りもの
空から舞い降りる雪たちを見つめながら、そこに彼女の姿を重ねてみた。

結晶がキラッと輝く。

──また、会いたい。

僕の心が微かに跳ねた。

振り返ると、君は俯いて、手のひらの中で水となった雪を見つめていた。

──君と、話がしたい。

僕は希望を決意に変え、再び青に変わった横断歩道を渡った。



決意を行動に移したのは、同日の夕刻。

外回りを終えた帰り道、僕は急いで駅前のケーキ屋に向かった。

そして、いつもガラス越しに見つめながら通り過ぎるだけだった足を止め、僕は初めてその店内に足を踏み入れたんだ。

そのまま緊張を胸に、レジ横で熱心にガラスを磨いている彼女に近づき、ショーケースの中を覗き込む。

けれど元々甘いものが苦手な僕が、ケーキを見たところで何を買っていいのかもわからない。

迷った挙げ句、僕は深呼吸をひとつしてから彼女に話し掛けた。

「1番人気はどれですか?」

話し掛けてからハッとした。

彼女の胸には名札の上に、あるメッセージが書かれていたから。


“耳が聴こえません”


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