【短】雪の贈りもの
同時に

『白の上に、雪の光を降らせるんだ』

そう言って粉砂糖をパラパラと散らばせた店長の真剣な眼差しを思い出した。

白のルミエール──雪の光──。

彼にはその想いも届くような気がして。

ニッコリ微笑んだ彼は

『じゃあ、それを2つ』

と、さっきよりゆっくり口を動かし、指を2本立てて見せた。

私はコクリと頷くと、急いでショーケースの扉を開け、ガラス瓶に入ったルミエールを2つ取り出した。



自分が、思っているよりもずっと動揺していると気づいたのは、取り出したルミエールの瓶を床に落としてしまった時。

今まで1度も失敗した事なんてなかったのに。

こんな私を雇ってくれるという感謝の気持ちから、いつも誠心誠意尽くしてきたはずだった。

なのに、目の前の彼に動揺して、お店の大事なプリンを2つも無駄にしてしまうなんて……。

呆然と立ち尽くす私の元に、音を聞き付けたのか、裏から店長が駆け寄って来た。

私はただ固まったまま、床に散らばる、プルプルの白とガラスの破片を見つめるしかできなくて。

見兼ねた店長が彼と言葉を交わし、新しいルミエールを箱に詰め会計を済ませてくれた。


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