【短】雪の贈りもの
ただ、せっかくの休日にまで店に行く気分にはなれないし。

現実のラストは、少し捻って

『500円はコンビニのミルクプリンに変わりました』

なんて。

私は500円玉を握りしめ、上着を羽織り外へ出た。

時刻は夜の8時。

ただでさえ寒さの応えるこの時期。夜は昼間よりもぐっと気温が下がる。

空からは、今シーズン2度目の雪が舞い降りてきていた。

──チラチラ……。

彼の耳を通したら、そう聴こえるような気がした。

私は落ちてきた白を1粒だけ握ると、意識とは別にガチガチと合唱し始めた奥歯をかばうように、歩く足を速めた。

そして、たどり着いたコンビニの扉を潜り、寒さで力の入った体をホッと緩める。

暖かい。

レジ横に並ぶおでんや肉まんからこぼれる湯気が、優しく微笑んでいるように見える。

あの日見た彼の白い息と、それが、私の中で重なって見えた。

──ふつふつ。

彼に重ね合わせると、いろんな物が、音となって私の心に届く。


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