【短】雪の贈りもの
けれど、寄り添うように浸かる大根と卵は、私にチクチクと胸をくすぐるような不思議な感覚も与えた。


優しい彼。

その隣に寄り添う彼女。

眺めるだけの私……。


無意識に膨らませていた想像を掻き消すように視線を逸らした私は、目当ての棚へ向かった。

そして、そこに並ぶゼリーやヨーグルトの中から、白いミルクプリンを手に取り。

そのまま、振り返って。

──ドックンッ。

大きな胸の中のノックを久々に感じる。

振り返って見えたそこには、同じようにプリンの棚を見ている彼がいたから。

そう、あの、彼が。

凝視する私に気づいた彼は、『あっ』と驚いた顔をして私と目を合わせた。

そして、またニッコリと微笑んだ。

ほんのひと時過ごしただけの私を、覚えてくれている……。

私は驚きと喜びと、恥ずかしさから、本当なら先日のお詫びをしなければならなかったはずなのに、謝るどころか微笑み返す事すらできない。

固まったまま。

彼と絡まった視線もほどけずに、その手からまた、プリンを床に落とした。

ニッと笑った彼は落ちたものを拾い、棚に並ぶ綺麗なプリンを私に持たせてくれる。

そして私が落としたはずのプリンは自分の手に持ち、

『会計?』

と口を動かし、レジを指差した。


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