喫茶ノムラへようこそ!
「あのね、えーっと……。」


何、言えばいいんだろう。

アタシはレッスンバッグをキュッと抱きしめた。

そのとき、バッグの中から甘い香りが溢れてきた。

……やっぱり、渡そう。

アタシはコータに駆け寄った。


「チョコ、あげる。」


アタシの言葉に、アイツは驚いた顔をする。


「いいの?」

「いらないなら、あげない。」

「いや、ほしいけど。」


はい、と、押しつけるように目的のものを渡すと、アタシはその場から逃げた。


「ユカからチョコもらいたかった!ありがとーっ!」


必死に走るアタシの耳に、アイツの大声が届いた。
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